パナソニックが「電子マネー対応非接触ICカードリーダーライター」の販売累計100万台達成を発表した。2003年9月に販売を開始、15年5月までの11年8カ月で達成したという。
その国内製造拠点は佐賀県・鳥栖にあり、大阪府・守口市と横浜市にに開発拠点を持つ。これらの体制で、いわゆるキャッシュレスインフラの普及拡大に貢献してきた。
「電子マネー対応非接触ICカードリーダーライター」というのは、いわゆる店舗などでSuicaやEdyなどの電子マネーでの決済をするためのデバイスだ。おそらくは誰もが毎日のように目にして利用しているものだといえる。2003年のSuica専用機である第一世代から始まり、2007年のnanako、WAONサービスに対応した第二世代、そして、現在はNFCに対応した第三世代の製品群が販売されている。
製造に取り組む佐賀県・鳥栖の工場は「よろず屋稼業」と呼ばれる拠点。パナソニックにおける小ロットの製品を一手に引き受ける。生産製品の半分は年間に3回しか作らず、生産ロット100台以下というものが7割を占める。そのため、日本全国から特定分野におけるスキルを持った社員が集結し、さまざまなノウハウが入り交じった拠点として機能している。これだけのバリエーションを生産している拠点は、パナソニックといえども他にはないという。
また、鳥栖市は福岡県と佐賀県の県境に位置し、九州の交通の要所でもあり、福岡から長崎、大分、熊本、鹿児島への交通の分岐点でもある。そのため、アマゾンが物流拠点などを構えていることでも知られる土地だ。
この100万台という数字をきくと、まだたった100万台だったのかと意外に思うかもしれない。だが、現在国内で使われている端末はすべてをひっくるめて約120万台にすぎないという。しかも、パナソニックのシェアは推定で7割を超えている。つまり、見かけたことのあるデバイスは、そのことごとくがパナソニック製である可能性が高い。
たとえばヤマト運輸の宅配便スタッフが持ち歩いているハンディーターミナル、日本マクドナルドやKFCの据置POS、コカコーラの自動販売機などはほぼ100%が同社製だと思われる。これらの企業は同社製の端末を使っていることを明かしているが、企業によっては相当のボリュームで関与していても、セキュリティ上の理由から絶対に明かせないところもある。十中八九とはいえないまでも7割がパナソニックのデバイスと考えると、これから買い物などで決済に利用する際にも、また別の見方ができるようになりそうだ。
「日本人は現金主義。クレジットカードや電子マネーで決済される取引はまだ10数%にすぎない。この値をいかに伸ばすかが今後の課題」
と、このビジネスを統括するパナソニックAVC社、パナソニックシステムネットワークス株式会社ターミナルシステムビジネスユニット長の古川治氏はいう。
同社では2020年度までに累計200万台達成を目標にしたいとしている。東京オリンピックに向けてニーズも高まり、海外からの旅行客も増える一方で、その頃には市場規模は倍に膨れあがっている可能性があるという。
今、電子マネーの世界は、リーダーライターそのものがインテリジェントなものとなりつつあり、スマートデバイスとして機能するようになっている。たとえばレッツノートで知られるAVC社ITプロダクツビジネス事業部の5型タブレット「TOUGHPAD」などはその典型的な取り組みだ。
HTML5やクラウド対応、そして、ネットワークへの常時接続など、パラダイムが変化する中で、パナソニックではデバイスに新たな付加価値を与え、新規の市場を拡大していくという。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)