日本マイクロソフトは、世界最大の学生向けITコンテスト Imagine Cup の日本予選大会を開催した。7月に米・シアトルで開催される世界大会への日本代表としての参加をかけて、最終審査を経た3部門9チームが激突した。激戦の地に選ばれたのは 羽田空港国際線旅客ターミナル内にある TIAT SKY HALL だった。世界に羽ばたけをイメージさせる会場だ。Imagine Cupはマイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏の発案で2003年に始まったもので、これまで延べ165万人の学生が参加しているという。
羽田空港国際線旅客ターミナル内にあるTIAT SKY HALLで開催された日本大会 |
戦いを前に各チームを激励する最終審査員のひとり、伊藤 かつら氏(日本マイクロソフト株式会社 執行役 デベロッパー エクスペリエンス&エバンジェリズム統括本部長) |
12回目となる今回だが、最新の Windows、Windows Phone、Internet Explorer のいずれかで動作するソフトウェア、もしくはソフトウェア+ハードウェアを使った作品が募集された。また、ソフトウェアをホスティングする場合は Microsoft Azure を利用することという条件がある。応募時に高等学校、専門学校・専修学校・高等専門学校・大学/大学院のいずれかに登録されている16歳以上の学生で、個人もしくは4人までのチームがチャレンジできる。
また、部門として次の3部門がある。
1.ゲーム部門
インタラクティブな遊びの体験を与えるゲームコンテンツ。従来のゲームの概念を覆すような作品。
2.イノベーション部門
既成概念や常識を打ち砕くサービス、テクノロジーの新しい使い方を提案するアプリ、最先端のテクノロジーを駆使したアプリ。
3.ワールドシチズンシップ部門
病気や自然災害、人権、貧困、情報へのアクセス、男女の平等といった社会問題を IT で解決するアプリ、サービス。
見事チャレンジの栄誉を勝ち取ったのは、イノベーション部門に「すくえあ (SCREEN feels AIR.)」をひっさげて参加した香川高等専門学校のチーム「すくえあ」だ。メンバーは山﨑啓太氏、金子高大氏、瀧下祥氏、東山幸弘氏ら。実は、このチームにはもう一人のメンバーがいるが「4名まで」という大会規定のために黒子に徹しているということだった。彼らは日本予選大会の賞金として部門賞10万円、最優秀賞20万円の計30万円と副賞を受け取り、さらに7/27から開催される世界大会へのチケットを手にする。世界大会での大きな障壁は英語によるプレゼンテーションだ。そこはトレーニングでなんとかなるにしても、審査員の厳しい質問に、その場で英語で答える必要がある。どんなに優秀な作品であってもプレゼンが拙ければ栄誉は逃げていってしまう可能性もある。
ちなみにもし「すくえあ」が世界大会で部門賞を獲得できれば、部門賞5万ドル(約600万円)と桁違いの賞金が授与され、さらにMicrosoftのベンチャー支援プログラムで開発したデバイスのビジネス活用についてのコンサルタントを受けられる。
「すくえあ」の名前は「スクリーン・フィール・エアー」に由来する。風を感じるスクリーンを新たなデバイスとして提案しようとしているわけだ。フィルム素材が風を受けて揺れたときに、そこに敷き詰められたマグネットが動くようにして、その移動量をセンサーで検知、ソフトウェアでそれを風圧に換算するデバイスだ。
これを活用したビジネスモデルとして、息を吹きかけて敵を倒すようなゲーム用入力デバイス、あるいは、肺活量を測定したり、トレーニングに活用するヘルスケア的な面などがアピールされていた。
Microsoftがこうした大会を主催するのは、ITを消費するだけではなく、若い世代に作る側にも興味を持って欲しいという願いによるものだ。個人的にも2013年の第一回から見ているし、過去の大会のいくつかは現地で取材をしてきた。そこで気がつくのは、日本での決勝での訴求と、作品そのものがまったく異なるアプローチに成長していることだ。
「すくえあ」も例外ではなく、これから決戦までの約3カ月の間に日本マイクロソフトとパートナーらによる徹底したメンタリングが行われ、決戦時は日本大会とはまったく別物の作品に生まれ変わる可能性、というよりもきっとそうなる。メンタリングによってどう化けるか。つまり、いわゆる「伸びしろ」があるかどうかが、選出要素の中でもかなりのウェイトを占めるのだ。もちろんこのことは「大人」のまなざしによるものであり、「大人」が気がつかなかった可能性を摘み取ってしまう危惧もある。
今回一次審査を経て日本大会に選出された9作品を見ていると、過去の大会よりも、完成形に近いものが多いように思えた。まとまっていてプレゼンテーションもうまい。でもコンパクト感が否めない。「伸びしろ」が希薄だと感じた。そんな中で化ける可能性を突出して醸し出していると評価されたのが「すくえあ」だったというわけだ。
いずれにしても世界大会まで残されている時間は3カ月しかない。彼らがどのように成長するかに期待しよう。がんばれ「すくえあ」諸君。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)