すごいなAI。もう2024年はこれにつきる。けれども、多くのユーザーのうち、このトレンドに気がついているのはいったいどのくらいだろうか。

ちょっとしたことを知りたいと思ったときに、以前のようにGoogleの検索ボックスにいくつかキーワードを羅列して検索結果を順に開いて、なんとなく確からしく、自分で納得がいく結果が得られたところで次を開くのをやめる……というやり方を変えたどうかということだ。

それはまだわずかであるけれど、昨日とまったく同じ検索ボックスの背景にいるのが検索エンジンではなく別のAIにすげかわっているかもしれないと考えれば、多くの市民の行動には、いろんな影響が出てくるに違いない。

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疑問をAIに尋ねる「もうひとつの選択肢」

少なくともAIの浸透によってもうひとつの選択肢ができた。AIにチャットで尋ねるという選択肢だ。つまりAIとの会話が新しい当たり前になるし、すでになってもいる。

最初は話題にはなったが利用するハードルが高かった。場合によっては利用するのに費用も必要だった。だが、多くのサービスは無料でも使えるようになっている。Google検索が無料なのと同じだ。YouTubeを検索に使う層が増えてきたのと同じで、便利な方に一気に流れていくのは目に見えている。

キーワードを並べての単純検索ではなく、AIに対して会話をするように自然言語で問いかけると、AIがそれに答えてくれる。必要なら、ウェブ検索もすませたうえで回答してくれる。一般的なユーザーにとっては従来の検索よりもずっと便利に感じるはずだ。

調べたいことが明確なユーザーは違うかもしれないが、そこがボンヤリしているユーザーには、AIによるナビゲートが役にたつ。「そうだよ、これを探していたんだよ」という錯覚だ。ほとんどのユーザーは納得してそれでよしとするだろう。

浸透するAIをどうカネにしていくのか

来年から数年をかけ、多くのユーザーの探し物体験は、大きく変わっていくだろう。そこでは広告のあり方やインターネットサイトの立ち位置や表現、そして、SNSにおける個々人のメッセージングといったものにも大きな変化が訪れるにちがいない。

今、AIの市場でしのぎを削っている各社は、莫大な投資を続けている。先だっても、OpenAIが営利法人主体で事業を運営することを発表して話題になった。

一般に浸透するAIをどのようにカネにしていくのか。この先はその手腕が問われることになる。検索ビジネスは広告ビジネスでもあったわけだが、この先のAIビジネスを維持するためには、ある種のサブスクリプション以外のビジネスモデルはあるのだろうか。

かつてのフリーミアム等のビジネスモデルでは、なかなかうまくいくようには思えなかったりもする。とにかくこれから起こる大きな変化に巻き込まれて混乱しないように気をつけつつ、身近なITに起こる最大級の変化に乗り遅れないようにしたいものだ。それを2025年という新しい年を迎えるにあたっての覚悟的なものにしたい。

2025年はどうかおだやかな年明けを

さて、終わろうとしているこの2024年は元旦に能登半島の地震、その翌日には羽田空港で日本航空機と海上保安庁の航空機が滑走路上で衝突するという衝撃的な出来事が相次ぐことで始まった。

暮れも押し迫った12月26日にはサイバー攻撃を受け、国内外のシステムに不具合が生じるなど、日本航空にとってはたいへんな1年だっただろう。

このコラムが掲載されるのは2024年の大晦日のはず。2025年は何ごともないおだやかな年明けを迎えさせてほしいと思う。

どうか、よいお年をお迎えください。今年もご愛読ありがとうございました。