高級キーボードのパイオニアとして高い評価を得ている東プレのREALFORCEブランドから、RC1シリーズの新キーボードが発売された。

REALFORCEは現在第3世代の製品がR3シリーズとして発売されている。また、そのスタンダード版ともいえる有線接続限定のR3Sシリーズもある。これらの製品のフォームファクタはフルキーボードとテンキーレスだ。また、ゲーム用にはGX1シリーズの製品もある。

  • 「REALFORCE」初の70%サイズキーボード「REALFORCE RC1 Keyboard」。コンパクトなフットプリントに必要なキーがしっかりレイアウトされている

RC1はこれらのシリーズに加わった新しいシリーズで、RCという型番が“REALFORCE Compact”を連想させるシリーズだ。

このシリーズの追加により、REALFORCEブランドのキーボードは、シリーズ、サイズ、カラー、接続方式(有線のみかハイブリッドか)、日英のレイアウト、スイッチ音(標準か静音か)、APC、キートップの印刷、分割スペースキーなどによって、細かく分類できるバリエーションがまた増えた。数えてみたら製品の種類が62種類もあった

REALFORC史上最小最軽量のコンパクトキーボード

REALFORCEは、極上の打ち心地を提供するプロフェッショナルのためのキーボード製品だ。そしてコンパクトを称するRC1は、2001年に初代が生まれて以来の同ブランド史上最小最軽量を実現した。

特に重量600グラムというのは、同様のコンセプトを持つコンパクトキーボードといってもいい「HHKB Professional HYBRID Type-S」の540グラムにはかなわないものの、HHKBにはない最上段のファンクションキーや方向キーが装備されている。

単純比較はできないが日本語レイアウトでのキー数はHHKBの69個に対して、82個ある。これらのキーは業務用の入力機器として必須と考える現場も多そうだ。

  • HHKB(下)との比較。60グラムほど重い

実際に日本語配列の全キー30g版製品を使わせてもらった。

打ち心地の素晴らしさはいうまでもない。コンパクトとはいえ、文字キー最上段左端の数字の「1」から「¥」までの距離、「2」から「Z」までの距離はフルキーボードと同じだ。文字を入力している限り、フルキーボードとの差はない。

ちなみに歴代のREALFORCEは内部にメタルプレートが実装されていてズッシリとした重厚感が安心できる打鍵感を実現していたが、RC1では軽量化のためか、それが省略されている。なので打鍵時のキー底突き時の返り感が既存製品とはちょっと違って感じるかもしれない。

キー配列についてとまどうとしたら右Altやアプリケーションキーがないことくらいだろうか。

また、方向キーの並びが下段「左下右」の順でその上に「\上シフト」の各キーが左から順に並ぶ。フルキーボードでは\の右にシフトキーがあるが、このキーボードではシフトキーがキーボードの右端に追いやられている。だが、文字入力時の小指運指を考えればこれはこれでいいんじゃないかと思う。

  • レイアウト右下部分の方向キー配置。シフトキーが右端に追いやられているがこれでいい

東プレスイッチ小型キーボードの選択肢が増えた

接続方法としては、充電できるバッテリを内蔵し、4台までの機器とのBluetooth接続、そしてUSBでの有線接続に対応するハイブリッド仕様だ。

充電池の採用にはちょっと驚いた。だが、サポートに手厚いREALFORCEだ。消耗品としてのバッテリが劣化したら容易に修理対応してくれると信じる。同梱されたマニュアルには処分する際にバッテリを取り外す手順も解説されていた。

スイッチ機構は静電容量無接点方式だ。この方式は、2011年に初代のREALFORCEが発売されて以来高く評価されている。APC(Actuation Point Changer)にも対応し、キーの押下げ0.8、1.5、2.2、3ミリのオン位置をキー個別に指定できる。また押下げ時のキー荷重は45グラムと30グラムがあり、配列も日本語と英語の両方が提供される。

先日、テンキーレスのアイボリー色R3キーボードが限定発売されたばかりだが、その重量は1.3キロで、今回のRC1の倍以上だ。

これまで静電容量無接点キーボードをこよなく愛するプレミアムコンパクトキーボードユーザーの多くが同じ東プレスイッチを採用するHHKBを選んできたと思うが、今回のRC1登場で選択肢が増えたことになる。それを歓迎するユーザーも少なくないだろう。

  • REALFORCE R3のフルキーボードとの比較。フットプリントは約70%になる

いろんな用途に対応する高いカスタマイズ性に期待

蛇足をひとつ。REALFORCEもHHKBも独自のキーマップ入れ替え機能を持っていて数種類のキーマップをキーボード本体が記憶できるようになっている。

だが、双方ともに修飾キーと一般キーの組み合わせに、特定の機能キーを割り当てることはできない。ホームポジションから遠いBackSpaceキーに右手小指を伸ばすよりも、Ctrl+Hを叩けばBackSpaceを叩いたのと同じになればいいのにと思っているユーザーはたくさんいる。「Control」や「Fn」キーとのコンビネーションショートカットを駆使するユーザーのためにも対応を考えてほしいものだ。

WindowsやmacOSなら、探せばキーボードコントロールのためのソフトウェアはあるが、使うパソコンに勝手にインストールしていいとは限らない。また、AndroidやiOSでは自在な再マッピングを可能にするアプリがなかなか見当たらない。

こうした事情を考えると、キーボードがキーマップを数種類記憶してくれるというのは実にありがたいのだ。そんなキーボードさえあれば、どんな機器でもストレスなく快適に作業ができる。今後は、そんな方向性にも対応してもらえればと思う。

こうしたコンパクトキーボードの充実、モバイルディスプレイの浸透などから、ノートパソコンの役割やあり方はちょっとずつ軌道が修正されつつある。そしてAI。これからのノートパソコンはどこをを目指していくのだろうか。