海、山のシーズンがやってきた。夏休みを利用して登山の計画をたてている方も多いと思う。
先日、知り合いの登山好きと話していてちょっと驚いた。というのも、昨今は、登山の道中、とにかくどこにいても携帯電話が通じてしまい、雑念を追い払うことができないというのだ。四六時中下界と連絡がとれる安心感は各種事業者の努力のたまものだと思っていたからびっくりだ。
彼の場合、登山行の最中には、携帯電話を機内モードにするのだという。山行で重要な天気の変化などは山小屋で知ることができる天気予報で十分だともいう。
以前は山小屋などでの通信はたいへんだったそうだが、今はStarlinkなどのおかげで、どこの山小屋でも高速な通信が確保できるようになっていて、彼のようなガチの登山家にとっては下界と一線を画することがなくなってきていると感じられるらしい。
万が一のときに携帯電話は必須の装備
そうはいっても万が一のときには携帯電話は必須の装備となるだろう。例年今の時期にはKDDIのネットワーク運用に関する説明会が開かれる。今年も東京・多摩市のセンターで説明会と見学会で同社の取り組みがアップデートされた。
年初に起きた能登半島地震での活動を例に、大規模自然災害に備えた取り組みも説明された。最大震度7という大地震が起こったわけだが、Starlinkを活用することで大きな効果を得ることができたという。また、ドコモやソフトバンクとの連携で、幅広い角度からの支援ができたことも大きかったようだ。
StarlinkはスペースX社による衛星インターネットアクセスサービスで、地球上のほぼ全域での利用が可能だ。数千機の低軌道周回衛星が周回して通信を媒介する。地表から衛星までの距離も500Km程度で遅延も少ないし、高速大容量の通信ができる。
本体キットと電源があれば使えて、それだけでWi-Fi環境を整えられる。背負子のように機材をまとめて持ち運ぶ必要はあるが、その重量は10キロちょっとで従来型の可搬型基地局とは比べものにならないくらいに手軽だ。実物を見せてもらったが、アンテナが大きいので装備はちょっと大振りだが、なんとか背負って歩けそうだ。
能登半島地震では750台のStarlinkを支援、キャリア連携も効果的
KDDIは750台のStarlinkを支援用に用意し、うち350台のStarlinkを各避難所に提供し、周辺の被災者がスマホによるインターネット通信ができるようにした。早期復旧にとても有効だったとしている。エリア復旧の過程では、車載型/可搬型/船舶基地局のバックホール回線にStarlinkを利用しているほか、自衛隊/自治体/電力会社などにもStarlinkの提供を行ったという。
こうした災害の現場での通信環境確保には、従来、可搬型の基地局や車載基地局が使われてきた。だが、今回は、大量のStarlinkがそれに代わって使われる場面が多かったらしい。
そうはいっても従来型の機材がいらなくなるわけではない。音声通話ができる通信環境は、消防や救急の点でも重要なのだという。LINEで通話ができるから、音声通話ができなくても大丈夫というわけにはいかない。
もっとも、最近は、家族の携帯電話番号でさえ暗記できていなくて、スマホの電話帳に頼るばかりという状況で、LINEならすぐにつながるというケースも少なくないだろう。だから、それも時間の問題かなとも思う。