モトローラ・モビリティ・ジャパンがAndroidスマートフォンの新製品として「motorola edge 50 pro」を発表した。また、ハードウェアは同じでキャリアルート向けの「motorola edge 50s pro」がソフトバンクから発売される。

モトローラ史上最速、バッテリ残量1%から満充電まで最短19分のTurboPower充電ができるというこの製品だが、発表会ではそのスピードをアピールするために、プレゼン中に充電するというデモンストレーションも披露された。

製品説明プレゼンの冒頭に充電をスタート、一通りの説明が終わるまでに満充電になってしまうというもので、うたい文句以上のそのスピードを確認できた。実測では19分を待たずに満充電になっていた。

  • motorola edge 50 proと、125W充電を実現する付属ACアダプタ「ターボパワーチャージャー 125W」

    motorola edge 50 proと、125W充電を実現する付属ACアダプタ「ターボパワーチャージャー 125W」

就寝時の充電がいらなくなる「神ジューデン」スマホ

19分というのはとにかく高速だ。製品には125W TurboPower充電に対応する「ターボパワーチャージャー 125W(ACアダプタ、USBケーブルセット)」が同梱され、その組み合わせのみでこのスピードが得られる。

朝起きてから出かけるまでとか、昼休みにランチを食べている合間に、また退社前の後片付け中に継ぎ足せば、満充電でアフターファイブとなる。もはや就寝時は念のためにいつも充電しっぱなしという習慣が捨てられる。

ソフトバンクは、Xiaomiなどモトローラ以外の製品で「神ジューデン」というキャッチフレーズで高速な充電をアピールしてきた。このedge 50s proは、この対応機のひとつとして追加されたかたちだ。ソフトバンクでは、方法を問わず、結果として1%から満充電まで35分以下であれば「神ジューデン」機としている。

モトローラ自身は、充電方式を超急速充電とし、それを実現するのがTurboPowerという同社独自のテクノロジーで、実際にはUSB PD 3.0とも互換性を持つというややこしい状況だ。

USB PD規格を超える6.25Aで急速充電

今、スマホの充電方式の主流は、iPhoneを含め、USB Power Deliveryという規格だ。USB PDとも略される。USBの元締めといってもいいUSB-IFが策定した世界標準の規格で、充電用のACアダプタと充電される機器同士が、充電前にインテリジェントな打ち合わせをして、安心安全に、そして高速に充電ができる電力の制御を行うためのものだ。

この製品に同梱されたアダプタに刻印された定格情報を確認すると、20V 6.25A 125.0W Maxという表示が見つかった。USB PDの規格は100W超の場合、大電力をサポートするEPR(Extended Power Range)で最大48V5Aで240Wとなるが、ケーブルを流れる電流は5Aに留まる。

なのにこの製品では最大6.25Aが流れる。つまり、USB PDの規格を逸脱している。

タッチアンドトライ会場で、係の人に聞くと、この20V 6.25A 125.0Wという電力のやりとりは、同梱アダプタとの組み合わせ時のみで、しかもデバイス側で「急速充電の使用」がオンになっているときだけに有効になるという。ここでは「急速充電」でモトローラ用語としての「超急速充電」ではないところも気になった。

  • motorola edge 50 proでは急速充電を使うかどうかを設定できる

  • 「ターボパワーチャージャー 125W」の仕様。最大6.25Aで出力できるというこだわりのアダプタだ

240W対応のUSB PD EPR規格でもよかったような

こんな具合に、世界標準の規格と、メーカー独自の規格、そして、売る側のマーケティングのための規格が入り交じり、エンドユーザーが混乱してしまうかもしれない結果を招いている。

125Wをめざすなら、28V5Aあたりをサポートし140Wを実現するEPRでもよかったはずだ。だが、そのためには、デバイス、ケーブル、ACアダプタ全部がEPR対応でなければならなくなり、コストアップにつながってしまうということなのだろう。

ちなみにUSB PD規格準拠のまっとうなアダプタを使った場合は、125Wがやりとりされることはなく、100Wに留まる。スピードとしては2割減、つまり、19分は22分ちょっととなる計算だ。そんなに大きな問題ではないように思うがどうだろう。世界標準の規格準拠の方がずっと安心して使えるのではないだろうか。