パナソニックエレクトリックワークス(EW社)がマイクロLEDを活用した次世代照明器具の技術開発について発表した。

今回は技術開発の発表のみで、実際の商品化は2025年以降を目指している。1970年代から蛍光灯やブラウン管の蛍光体などの供給でパナソニックと協業してきた日亜化学工業とのコラボレーションによる次世代照明器具の光源に関する技術だ。

  • ひとつの光源が複数の光として表現される次世代光源

髪の毛よりも小さなLEDを1万6,000個操る

日亜化学が開発したμPLSと呼ばれる光源は、髪の毛よりも小さな径のLEDを1平方ミリメートルあたり400個の間隔で約1万6,000個配置したものだ。ライトエンジンと呼ばれるもので、もともと車載照明として光が必要な部分のみへの路面照射を可能にするヘッドライトを実現することなどのために、日亜化学とインフィニオン社がμPLSライトエンジンを共同開発した。

駆動するための回路を半導体に実装することで「光る」技術と「操る」技術を一体化したという。すなわち、ピクセル制御に特化した半導体を作り、そこにマイクロLEDが三次元実装されているものだ。

  • パソコンの画面上でオブジェクトとしての光の動きを定義すると、その通りに動く光が照射される。でも光源は動かない

  • これがその光源

今回のパナソニックとの協業では、そのエンジンを活用し、パナソニックが同社の照明制御技術や高速信号処理技術などを組み合わせた。

この技術を使った次世代照明器具は、1台の器具で複数の対象物を照らしたり、文字やサイン、グラフィックスなどを光として照射できるという。なのに光源は動かさないでいいのだ。

それを自在にコントロールするためのアプリケーションについても披露され、誰でも簡単に、クリエイティブに光を扱えるようになることが紹介された。

光源は動かさずに光だけを自由に動かす

パナソニックEWは、この協業の中でユーザーインターフェース、制御ソフト、機構、工学系を担当し、人、光、空間の新しい関わりを作っていくことをもくろむ。

なにしろ、光の形を自由に変えたり動かしたりできることで、形状、点灯数、エッジ、イン円パターン、サイン、フリードローなど、まるで光を絵の具のようにしてあらゆるものをキャンバスにして彩り、複雑な光を簡単に楽しく扱えるようになるという。

また、器具の空冷が必要なくなる可能性もあり、可用性が増すことで、設置の自由度なども得られるそうだ。

デモンストレーションでは光源が動いているわけでもないのに、左から右へ、右から左へとパンニングされるスポットライトが紹介されていた。これなら、動的な光による多彩な演出ができそうだ。

必要な光だけを点灯させる“エコ”なあかり

よく似た装置としてはプロジェクターを想像するかもしれない。だが、プロジェクターは光源から出た光のうち、不要なものを液晶など内部の映像素子で除去する仕組みで成立している。暗い映像を投影するときにも、プロジェクター側の光源は最大の電力を消費する。

だが、マイクロLEDなら必要な部分だけLEDを点灯させ、必要のないLEDは消灯しておくことができ、最小限の電力消費ですむ。同じ理屈で、局所的に高い照度を得たりするのもたやすい。

こうした技術を使うことで、暮らしの中でのさまざまな光の体験は、近い将来、また、大きく変わることになるだろう。白熱電球から蛍光灯、LED照明へと変化を遂げてきた光の技術だが、ここでまた進化を遂げる。さて、どんな照明器具が登場するのだろう。今から楽しみだ。

それに今はAIという心強い味方もいる。AIが制御する照明というのも身近な存在になるのだろう。

【お詫びと訂正】初出時、LEDの配置間隔を1平方メートルあたり400個としていましたが、正しくは1平方ミリメートルあたり400個でした。お詫びして訂正いたします。(2024年3月12日 15:40)