ソースネクスト社の文字起こしAI「AutoMemo(オートメモ)」の累計アカウントが10万件を突破したという。録音した音声を自動的に文字にして記録、それを編集したり、共有したりできるクラウドサービスだ。

一般的なICボイスレコーダーのように、音声を録音するだけではなく、それを文字にしてくれるという点でレガシーから進化している。

  • AutoMemo SとAutoMemo用Webアプリ。Webアプリでは文字起こしされたテキストを、話者ごとに分けて表示できる

文字が自動でテキストになる快適さ

クラウドサービスなので、手持ちのスマホで利用できるアプリだけでも完結するほか、専用のハードウェアとしてAutoMemo RとAutoMemo Sという2機種が提供されている。最新機種はモデルRで、モデルSのタッチパネルディスプレイを省略、録音に特化して軽量化したモデルとなっている。

この専用ハードウェアを使って録音すれば、自動的にデータがクラウドにアップロードされる仕組みだ。会議などで議事録のために録音が求められるような場合、録音のために、自分のスマホを会議テーブルの真ん中に差し出すのは抵抗がある。

でも、従来のICレコーダーのようなデバイスなら、周りの人も、そして自分自身も気にしないですむ。専用機器というのは、そんな特徴もあるわけだ。

料金は月に1時間までを無料で文字起こしするお試しプランの他、月額1,480円、年額12,800円、100時間分14,000円といったプランが用意されている。月に1時間では会議一回分で終わりなので、実質的に有料クラウドサービスという位置づけだ。

何しろ、会議が終わった直後には、会議の内容が文字になって手に入るのだから、記録係にとっては便利この上ない。言った言わないというややこしいいざこざも無縁になるはずだ。

  • AutoMemo Rは音声の「録音」に特化したモデル。文字起こしの結果はスマホアプリかWebアプリからのみ確認できる

一方、ソースネクストから事業を分離して新会社になったポケトーク社は「AI通訳機ポケトーク」で知られている。こちらも専用のハードウェアを提供するほか、スマホアプリでも利用できるクラウドサービスだ。

ただ、オートメモと違い、Wi-Fiやスマホのテザリングなど、通信手段を自前で用意する限りは、通訳機能を無制限に無料で使える。しかも、翻訳結果をリアルタイムにクラウド保存するので、文字起こし的な要素にも対応できる。その一方で、同社の「ポケトーク同時通訳」は、月額2,200円のクラウドサービスとなっている。このあたりは、自分の用途をよく研究して購入したほうがいい。

これからはローカルでのAI処理が進む

もっとも、スマホのようなデバイス単独でAI処理ができるようになってきて、これらのようなサービスがクラウドに頼ることなく、デバイスローカルで処理できるようになっていくのが現在のトレンドだ。

たとえば、Googleのスマホ、Pixelシリーズでは、レコーダーアプリが提供され、各国語の対応データをダウンロードしておけば、通信ができない環境でもローカルで文字起こしができる。これで通信費が浮くというよりも、秘密性の高い情報を外部に伝送することなく、スマホローカルで文字起こしデータや翻訳結果が得られる。

生成AIが話題になることが多い昨今だが、隙あらば、目の前のデータを貪欲に取り入れて賢くなろうとするAIに、他社に知られたくない秘密の情報を処理させることには抵抗がある。余計な心配はしたくないといったニーズは高まる一方だ。

さらには、いくら高速といってもクラウド処理でのデータ往復にはディレイが生じるが、ローカルならそれも最小限で、いわば打てば響くような処理結果が得られる。

進化の余地を残したサービス、今後に注目

こうした時代の流れに、ソースネクストやポケトークのような企業がどのように対応していくのか。スマホのような汎用デバイスで稼働するアプリと、サービスに特化した専用デバイスでの利用の棲み分け、そして、その料金体系、後発のAI利用のローカル処理ができるサービスへの対抗策などなど、考えなければならない要素はたくさんある。

ポケトークの累計出荷台数は2018年にポケトークWが発売されてから、この5年間で100万台を超えている

その間にコロナ禍に見舞われはいるが、それでも成長を遂げてきた。そのコロナ禍も収束に向かい、また、同社のサービスに対する世の中の需要が高まりつつあるなかで、これからこのソリューションはどのような進化を遂げるのか。当面、ソースネクスト社とポケトーク社の動きからは目が離せない。