• Microsoftのイベントでは「Introducing Copilot in Windows」と題し、Windowsに組み込む対話AI「Copilot」の機能が紹介された

    Microsoftのイベントでは「Introducing Copilot in Windows」と題し、Windowsに組み込む対話AI「Copilot」の機能が紹介された

生成AI導入の是非は難しい。賛否両論がある。未成熟ゆえのリスクもある。ただ、サービスとしてAIを提供する積極的なIT企業は、AIを使った明るい未来を新しい当たり前として示唆する。

Windowsの次期アップデート、目玉は対話AI

先週は、MicrosoftとAmazonという2大巨頭ともいうべき巨大企業が、その舵取りの方向性や方針を説明した。偶然なのかどうか、両社ともにご近所である。

Microsoftは米・ワシントン州のレドモンド、そしてAmazonは大都市シアトルに本拠地を置く。レドモンドはシアトルの郊外で、ワシントン湖を挟んで対岸にあり、クルマで移動すれば、よほどの渋滞でもない限り、30分以内の距離だ。ただ、なぜか、両社の発表イベントは地元での開催ではなかった。

Microsoftは今週にも、Windowsの最新のアップデートにAIとの対話機能を組み込む予定で、更新後は誰もがAIとの対話によるアドバイスを受けたり、ややこしい作業の依頼などができるようになる。このAIは、Microsoft Copilotと呼ばれる機能として、この夏からプレビューが行われていたものだが、いよいよ本格的なAIとの会話が誰でも使えるかたちでWindowsに組み込まれることになる。

Alexaも生成AI実装、「普通の会話」ができるかも

一方、Amazonは新旧のEcho端末のAlexaがAI対応することを発表、こちらは来年の対応になるそうだが、先んじて米国のユーザー向けにプレビューが開始される。

Echoのような端末は、スマートスピーカーと呼ばれていたが、今回の対応によって、正真正銘のAIスピーカーになるというわけだ。まさに、普通に、AIとの会話が楽しめそうだ。この「普通」が大事なのだ。

知りたい情報を単に提供するだけではなく対話、会話を成立させるのが生成AIだ。昨今は、完全ワイヤレスイヤホンでAlexaとの対話がサポートされているが、街中でAlexaと話をする様子は、知らなければ誰かと電話で話しているのと区別がつかないくらいになるかもしれない。

  • AmazonはAlexaを生成AIで賢くアップデートする。自然な会話ができるようになりそうだ

知的財産の侵害リスクはMicrosoftが責任を負う

Microsoftは 生成AI利用にあたって、AIが回答する内容に対して、その根拠となる参照先を情報源として併記する。いわゆる「ソース」だ。

エンドユーザーはAIの回答を鵜呑みにするのではなく、それが本当なのかはもちろん、その確からしさが情報源の知的財産権などを侵害していないかどうかを確かめることができるようにしている。知らないうちに、著作権や著作者人格権を侵してしまっていてはたいへんなことになるからだ。

ちなみにMicrosoftは同社のAIサービスCopilotの利用によって、「万一、著作権上の異議を申し立てられた場合、マイクロソフトは法的リスクに対して責任を負います」というCopilot Copyright Commitmentと呼ばれる声明を発表している。

「第三者がMicrosoftの Copilot または Copilot が生成する出力結果を使用した法人の顧客を著作権侵害で訴えた場合、その顧客が製品に組み込まれたガードレールとコンテンツフィルターを使用しているという条件の下で、マイクロソフトはその顧客を弁護し、訴訟の結果生じた不利な判決または和解により課された金額を支払う」というものだ。

生成AIは人間のよき相棒になれるだろうか

Windows OSは、ビジネスに使われることが大前提でもあり、そのビジネスプロセスにおいて生成AIが使われることで、リスクが発生した場合のことを想定しているのだろう。

それでも、Windowsの企業顧客のなかには、このCopilot、すなわちAIをまだ使わないという選択をするところはたくさんあるだろう。何かがあってからでは遅いので、企業としてはおっかなびっくりで、生成AIに対して慎重な立場をとるわけだ。そのあたりは、AmazonのAlexaとは、ちょっとスタンスが異なる。

ただ、そのAlexaも、アレを実現したことを喜び「私がいちばん好きな球団は阪神」、などとひいきのチームをアピールするフレーズを会話に入れてきたら、阪神ファンではないユーザーは腹がたつかもしれない。そのあたりの微妙な会話を生成AIとしてどう実現するかのかが気になるところだ。

人間の場合、夫婦、親子だって兄弟姉妹だってケンカする。家族同然の付き合いを続けているAIとのケンカは、どのように起こり、どのように収束するのだろう。ケンカができるくらいに優れたAIが期待されるのか、そもそもケンカが起こらないようにするAIが求められるのか。なんだか鉄腕アトムの時代に考えた禅問答のようだが、まさか、本当にそれを本気悩む時代が生きているうちにやってくるとは……。

MicrosoftとAmazon、生成AIの取り組みについてはまだ温度差があるが、どちらも、今後の世の中を大きく変える可能性を秘めている。