auの世界データ定額、海外ダブル定額サービスに障害が発生した。2023年8月25日(金)午後10時5分から8月26日(土)午後1時42分までの約15時間という比較的長時間にわたるトラブルだ。

  • auによる障害情報。8月26日午前3時から断続的に続報が更新されていた

このサービスは、auのみならず、UQモバイル、povoといったKDDIの契約ユーザーが海外からローミングでデータ通信をするためのものだ。日本だと金曜日の夜から土曜日の午前中だが、EU圏内(15:05~)、北米のニューヨーク(9:05~)、西海岸(6:05~)、ハワイ(3:05~)などと時差もあって平日もからむ。

今は、次第に海外渡航の機会が増えつつあり、また、夏休みも終わりに近いということで、ビジネスはもちろん、観光でも影響は大きかったのではないだろうか。

海外にいるときの方がスマホへの依存度は高い

今、ほとんどの航空会社は、飛行機が滑走路に着陸し、機体が安全なゾーンに移動した時点でアナウンスがあり、通話以外で小型端末を利用してかまわないと告げられる。それで機内モードをオフにして電波をつかまえられる。

まだ飛行機がゲートに到着していない時点でデータ通信ができるので、長時間のフライト中に受け取ったメールを一気にチェックしたり、日本に残る家族に「無事着陸なう」のメールを送ったりすることができるわけだ。

でも、今回は、それができなくてあせった方がたくさんいたということになる。海外旅行の行程真っ最中に、突然、データ通信ができなくなったことを考えただけでゾッとする。あまりにも海外旅行でのスマホの便利さに慣れ親しんでしまっているからだ。案内、調べ物、翻訳、とにかくおはようからおやすみまでスマホとその通信にたよりっぱなしだ。日本国内にいるときよりも、海外にいるときの方がスマホへの依存度は高いと思う。

いずれにしても最悪の事態だ。スマホが通信できなければ、交通機関の乗り換え案内やナビゲーション地図を確認できず、目的地にたどりつけなかったり、クラウドに置いたPDFドキュメントが参照できなくて、イベントなどの入場券がチェックできないといったこともありそうだ。最悪、宿泊先のホテル名さえわからないかもしれない。きちんと紙に印刷していかないのが悪いといえばそれまでだが、通信障害で被害に遭った側を責めるのはどうかと思う。

通信が不調になったらまずフリーWi-Fiを探そう

普通の人にとって、通信事業者というのは絶大なる信頼を寄せる対象のひとつだといっていい。だから、今回のように、データ通信ができないという事態が発生したときに、必ず疑うのは、自分の設定が悪いんじゃないかとか、端末が壊れたんじゃないだろうかといったことだ。それで悩んで、ああでもない、こうでもないと、設定をいじりまくり、時間を浪費した方も多かったと思う。

こういうときには、とにかく、フリーWi-Fiなど、インターネットが使える環境を見つけてスマホを接続し、何が起こっているのかをチェックする。本当は予備の端末や回線を使ってテストしたり、身の回りの、同様の環境にある他の人はどうなのかを尋ねるのも有用な手段だが、海外ではなかなかそうはいかない。普通はスマホは一台しかないだろうし……。

だからインターネットに頼る。それで端末が故障したのか、ネットワークに原因があるのかがわかるというわけだ。ただ、何よりも、通信事業者としては、そのことを障害情報として、海外にある端末に対してSMSなどで告知し、刻一刻と変わる状況を知らせ、何が起こっているのかをきちんと知らせるべきではないか。Twitterで検索すれば、世の中で起こっていることはたいていリアルタイムでわかる、なんてことを通信事業者がエンドユーザーに期待してはいけない。

東京・多摩にあるKDDIのネットワークセンターを見学したことがあるが、そこには巨大なスクリーンに何画面ものリアルタイム情報が映し出され、今、同社のネットワークがどのような状態にあるのかが一目瞭然でわかるようになっていた。

万が一、障害が起こった場合には、一分一秒でも早くそのことを検知し、その解消に向かって対処していけると説明を受けた。表示の中にはTwitterの画面もあり、誰かがネットワークがおかしいとつぶやいているようなことがあれば、それを見つけ、そのメッセージもまた、貴重な障害情報として扱われているとのことだった。実際、今回の障害発生でも「au 障害」といったキーワードでTwitterを検索してみると、今さらながら、たくさんの悲鳴が見つかる。

ユーザーの安心につながる対応を考えてほしい

実際、公式の障害情報が出るまでには時間がかかる。障害があっても、それが本当に障害なのかどうかを確認するプロセスが必要だからだ。

障害が解消されたときも同様で、もう何も問題がないということが確認できるまでには、それなりのプロセスが必要だ。当然、時間がかかる。だから、公式情報はいちばん遅いということも起こってしまうわけだ。今回のKDDIからの障害案内も、第一報は3:00からと、発生後、5時間近くが経過したあとだった。これでは本当に途方に暮れてしまいそうだ。

海外から日本国内の事業者のサービス障害の様子を把握するというのは、とてもハードルが高い。今回の場合も、かりに障害情報を見つけたとしても、そこに記載された問い合わせ先は一般電話番号だ。03局番にもかかわらず、海外からローミングで電話すると通話料は無料だということが調べればわかるが普通はそうは思わない。障害案内のページにも、そのことはひとことも書かれていない。そもそも海外からの問い合わせ方法が記載されていないのだ。

障害を起こさないことも重要だが、その可能性をゼロにはできない以上、起こったときにどうするのがエンドユーザーの安心につながるのか、そのことをさらに真剣に考えるよう、KDDIには強く求めたいと思う。