ティ・アール・エイが軟骨伝導ワイヤレスイヤホン「cheero Otocarti LITE(オトカルティ ライト)」の一般販売を開始した。クラウドファンディングのMakuakeで1,270万円の支援金を集めた製品だ。同社にお願いして、一般発売前に製品を試すことができたので紹介しよう。
第3の聴覚経路、軟骨伝導のワイヤレスイヤホン
骨伝導なら聞いたことがあっても、軟骨伝導って何だと思う方も多いと思う。先行する製品では、昨秋、オーディオテクニカが世界初のワイヤレス軟骨伝導ヘッドホン「ATH-CC500BT」を発売している。
音が聞こえるプロセスとしての聴覚経路は「気導経路」と「骨導経路」の2種類があると考えられていた。それに加えて2004年に、第3の経路として軟骨伝導が発見された。
骨伝導が頭蓋骨を比較的大きな力で振動させるのに対して、軟骨伝導は耳の軟骨を振動させることで外耳道の空気が振動し、それが鼓膜を揺らす。振動させる相手が軟骨なので力は弱くてもいい。結果としてボリュームを確保できる。
また、骨伝導では鼓膜は揺れないが、軟骨伝導では鼓膜が揺れる。つまり、既存のイヤホンと骨伝導イヤホンのいいとこ取りをしている仕組みと考えてもいい。同じ音量を得るために、骨伝導よりも小さなエネルギーですみ、ボリュームを上げたときの不快な振動も抑制できる。
耳の凹みにひっかけるようなイメージで、玉状の本体を装着する。軟骨に軽く触れるだけで十分だ。耳穴に強引に突っ込む必要もない。だから、環境音は普段と同じようにきこえる。
音漏れは少ないが、ゼロではないし、環境音が聞こえるということは、電車の中などのうるさい場所でのボリュームに不足を感じるかもしれない。
環境音がそのまま聞こえ、テレワークにも便利
左右独立分離型のワイヤレスイヤホンではない。ネックバンドから左右に生えるケーブルの先端にイヤホン本体が装備されている。
本体を耳にひっかけるときに安定しやすいようにシリコンのサポートホルダーが用意されていて、それを耳たぶの上の凹みにひっかけるようなイメージで装着する。激しい動きを伴わないならサポートホルダーはなくても平気だが、耳の形状によっては不安定ですぐに外れてしまうかもしれない。
競合製品は、こめかみあたりに振動子を密着させるが外耳には何も入れない。この製品は、ひっかけるだけで耳穴を塞ぐことはないとはいえ、耳に何かがつきまとうので、それがうっとおしく感じることもある。このあたりは、好みの分かれるところだろう。
音質にも自信ありで、Bluetooth接続の際のコーデックとして、AACやSBCのほかにQualcomm aptXにも対応する。頭蓋骨を振動させる骨伝導は左右の音が混じってしまいステレオの臨場感を出しにくいが、左右のユニットが個別に左右の鼓膜を振動させるこの製品では、その心配がない。ステレオ感は良好だ。
オンライン会議のコミュニケーションに集中しつつも、来客や配達、家族の呼びかけなどには適宜対応するために環境音を閉ざすわけにはいかないテレワークや在宅勤務にも最適だ。ジョギングなどで屋外で使うときにもクルマの往来などの環境音が聞こえるので、危険を察知できる。
音量ボタン同時押しの“強制ペアリングモード”も役立ちそう
Makuakeでは、ネックバンドタイプの「LITE」と、ヘッドバンドタイプの「ACTIVE」の2種類、さらに、集音器とイヤホンがセットになって会話しやすくする「MATE」が提案されていた。
ヘッドバンドタイプは高い背もたれに頭を預けるときや、仰向けに寝転がるときに、後頭部に異物感を感じるので、横着者にはネックバンドタイプの方がいい感じもする。
とはいえ、暑い季節のランニングといったときに使うには、首周りの汗などのことを考えるとヘッドバンドタイプの方がいいかもしれない。ただし、今回の発売は、ネックバンドタイプだけで、ヘッドバンドタイプは後日の発売となる。
スマホやパソコン、テレビなどとはBluetoothでの接続で、2台までの相手を記憶する。接続相手が見つからない場合には自動的にペアリングモードになって他の機器とのペアリングができる。
強制的にペアリングモードに入る操作は説明書に記載されていないが、ボリューム+と-ボタンを同時に5秒間押すと、強制リセットになって、新たなペアリングモードに入る。使う機器を頻繁に入れ替える場合は、この方法で、その都度接続するのが手っ取り早いかもしれない。