日本のスタートアップ Nature社が「Matter」に対応するスマートリモコン「Nature Remo nano」の販売を開始した。
累計60万台を売り上げたシリーズの最新モデルだ。3,980円というサイフに優しい価格設定で、10畳程度の広さの部屋全体をカバー、そこで稼働する赤外線リモコン対応の各種家電をコントロールできる。
設置も簡単なら、使い始めるときのセットアップも容易だ。コントローラはnanoの名に恥じないコンパクトさで約5センチ四方、厚みは12ミリちょっとだ。重量も13gしかない。
USB Type-Cポートが装備されているので、そこに電源を供給する。それだけだ。本体内にバッテリは実装されていないし、そもそもスイッチのようなものもない。
電源を供給した状態で、スマホにアプリを入れてコントローラを既存の宅内Wi-Fiネットワークに接続、コントロールしたい家電製品を順次登録していく。ここまでの導線も実にスマートだ。
機器登録も、既存リモコンをこの製品に向けてボタンを何か押すと機器のメーカーや製品が識別されて登録され、アプリから各種のコントロールができるようになる。
Amazon Alexaなどとの連携も容易で、自動的に追加され、Echoデバイスなどがあれば声で家電をコントロールできるようになる。
世界初、Matterと赤外線を“橋渡し”するスマートリモコン
大きな特徴は、この製品が世界初の赤外線リモコン対応ブリッジデバイスとしてMatterに対応していることだ。
MatterはCSA(Connectivity Standards Alliance)が策定した規格で、誰もが簡単に、メーカーごとの独自規格とその互換性などに悩まされることなく、家電をコントロールできるようにするためのものだ。
たとえば、Amazonは音声アシスタントを各種のEchoデバイスで使えるようにしている。画面付のものからスピーカーだけのものまで、いろいろなタイプのデバイスがある。Works with Alexa認定のサードパーティ製品なら、alexa経由でコントロールできるが、ソフトウェアアップデートにより、Echoデバイスの20モデルがMatterに対応している。
Amazonは、フラストレーションフリーセットアップと呼ばれる手続きを提供し、同社サイトでデバイスを購入する際に、買った製品をアカウントに紐付けしておくことができ、手元に届いた製品の電源を入れると、すぐにセットアップが開始され、さまざまな既存データが共有される。
Matterの場合は、電源を入れるだけでデバイスは自動的にAmazonアカウントに保存された既知の家庭内Wi-Fiに接続し、第4世代Echoデバイスを通じてコントロールできるようになる(Wi-Fi伝送の場合)。
これで家庭内の家電コントロールを構築するためのハードルは一気に低くなるはずだ。業界的にも注目されている。
開発のきっかけは「電力の需給調整をしたい」
Natureの創業者である塩出晴海氏は商社マンからの起業家で、前職では三井物産で電力の事業開発に携わり、途上国にへの長期出張を繰り返した仕事に没頭していたという。
このスマートリモコンを作りたいと思ったきっかけは、電力の需給調整をしたかったからだ。本当は電力を供給する側に立ちたかったものの、それをいきなり始めるのは無理。でも、需要側を制御するならベンチャーでもできるんじゃないかと考えた。そして完成したのが初代のNatureだったらしい。
今、この原稿を書いている朝、気象庁の天気予報を見ると、7月11日の東京地方の最高気温は36度まで上がる予想だ。
熱中症防止のためにもエアコンは必須だが、電気の使用量は増えるし、電気の需給調整もたいへんだ。かといって、高齢者が節約で数千円をけちって熱中症になり、身の危険に遭遇するという惨事も回避されなければならない。
塩出氏のいうようにスマートリモコンで調整ができれば、こうした状況も改善するのかもしれない。とりあえずは、人の意識を変える必要がありそうだが……。