日本屈指のISP大手IIJが、東京の都立学校248校の帯域確保型インターネット接続環境を構築したという。
GIGAスクール構想における公立学校への帯域確保型接続の一斉導入は国内初で、増大する一方の学習用途のトラフィックに対応し、快適でストレスのないネットワーク環境で、子どもたちは学習に取り組める。
IIJが用意したのは、一校あたり2Gbps帯域のインターネット専用線。248校あるので、合計496Gbpsの帯域を提供することになる。現在の学校現場では1校あたり1Gbpsのベストエフォート回線を2本というのが一般的なので、帯域を保証した専用線で正味の2Gbpsを確保した点は、確実に得られる環境として有利だ。
このトラフィックが都内に設置された広域イーサネット経由でIIJのデータセンターに届き、そこからIIJのバックボーン経由でインターネットに出ていく。
一校あたり2Gbps帯域のインターネット専用線が使える
ベストエフォート回線を複数本束ねてもベストエフォートはベストエフォートだ。児童、生徒が授業中にいっせいにアクセスすればパンクすることもある。一戸建ての一般家庭の家族数人で使う帯域を数百人で使うのだから何があってもおかしくない。周辺の会社組織などのトラフィックの影響を受けることもある。だからこそ、各校に専用線による帯域確保型のインターネット接続サービスを導入することにしたわけだ。
仮に生徒一人が1Mbpsを必要とするとして、2GBが確保されていれば2,000人がいっせいにその帯域を使えることが保証される。ベストエフォートでもできる可能性はあるが、できないこともある。もしできなかったら何も知らない児童や生徒は端末の理不尽な動きに悩まされることになる。当然、学習はそこで中断する。ボタンをクリックしたのにウンともスンとも言わずに、グルグル回るアイコンを見つめるだけになってしまう。
学習に使うインターネットは学習の邪魔をしてはならない
水道やガス、電気のように、スイッチを入れればいつも通りに使えるインフラではないのがインターネットだということを理解することも大事だが、学習に使うインターネットは学習の邪魔をしてはならない。使いたいときにバッテリが空のパソコンと同様で、そこで発生するトラブルは、教える側の時間も奪うことになるだろう。インターネットの仕組みを知るのは、学習ができたあとでいい。
IIJによれば、GIGAスクール構想は、コロナ禍によって実施が前倒しになり、環境の整備が急速に進んだものの、今後はデジタル教科書や教材がさらに利用増加し、当初の想定による利用帯域では、そのトラフィックの増大に耐えるのが難しくなっているそうだ。
つまるところは、「インターネットの使い方を勉強すること」と「日常的な勉強のためにインターネットを使う」ことは、いったん切り離して考えなければならないということだ。
そしてそのためには、スイッチを入れれば必ずいつも通りの環境が得られるようにしておく必要がある。朝一番に大量の生徒がいっせいにパソコンを使い始めようとすると、長時間待たされたあげくにタイムアウトするとか、そうした理不尽を味わうことは避けなければならない。
「ただいまアクセスが集中しております」にならないために
この令和の時代にも、コンサートチケットの確保などでは、いまだに、順番待ちのシステムがインターネットで動いていたりする。ブラウザセッションを大量に開いて、順次、試行しながら、うまく予約できるまで繰り返したりして努力する。「ただいまアクセスが集中しております」的なメッセージは誰もが見たことがあるだろう。電話予約の時代の「ただいま大変込み合っており……」と何も変わっていない。それでいいはずがないのだ。
アクセス集中は、経路の帯域が保証されていても、そのコンテンツを提供するサーバーが非力では同じようなことが起こる。それを回避するために、動画配信や大規模商用サイトではCDN(Content Delivery Network)などの仕組みが使われている。単一のサーバーにサービスをまかせないで、キャッシュサーバーにトラフィックを分散させる仕組みだ。
GIGAスクールの学習素材も、その規模になっていくであろうことも視野に入れておく必要がある。IIJには教育委員会などの関係各所に対して、その必要性の啓蒙にも励んでほしいものだ。もちろん東京都のみならず、日本全国の児童、生徒が快適に勉強できるようになってほしい。