本当に久しぶりに海外出張した。最後の海外渡航は2019年秋で、そのままコロナ禍が押し寄せ、2020年以降、予定していた海外取材などを自分でキャンセル、そして、主催者もキャンセルする状況が続き、昨年(2021年)あたりから、ソロリソロリとさまざまなイベントがリアルとオンラインのハイブリッドで開催されるようになってきていた。

今回でかけてきたのは台湾・台北だ。ASUSのノートパソコンの発表会で、日本からの飛行時間は3時間台と、リハビリにはちょうどいい感じだ。

  • 懐かしの台湾・台北。コロナ禍から海外取材にはでかけておらず、数年ぶりの訪台だ

帰国に便利なVisit Japan Webサービス

往路については特に問題はなかった。以前と変わったところもない。東京・羽田空港からの出発だったが、2箇所ある保安検査場のうちのひとつが大混雑していたのには閉口した。もう片方の検査場はそれほどの混雑ではなく待ち時間は段違いで、両者の違いは並ぶ時間にして1時間程度の差があった。誘導に問題があるようにしか思えない。改善の余地がある。そこを通過しさえすれば、あとは、自動化ゲートを顔認証で通るだけだ。以前とまったく同じだ。

復路、つまり、日本人が日本に戻ってくるときについては、基本的に「Visit Japan Webサービス」を利用する。日本人にとっては帰国なのにVisitだ。説明には「海外から入国される方のほか、日本に帰国される方もご利用頂くことができます」とあるので、日本人がこのサービスを使えるのはオマケ扱いなのかもしれない。

また、Googleなどで、「Visit Japan」を検索するとデジタル庁のサービス紹介ページがトップに表示される。利用したい場合は、サービスそのもののページに行きたいわけで、その場合は、「Visit Japan Web|デジタル庁」へのアクセスが必要だ。このあたりの導線については、SEO対策などで一工夫が必要だと思った。

ウェブサービスは、OSごとにアプリを用意する必要がないが、サービスへのアクセスに導線を提供するのが難しい。ここはもう、パスポートの写真ページにサービス利用のQRコードでも表示されていてほしいくらいだ。

日本に入国するためのステップがスマホ操作で完了

このサービスは、

  • 検疫
  • 入国審査
  • 税関申告
  • (必要なら免税購入)

という日本に入国するためのステップをウェブで行うサービスだ。コロナ禍の始まる前の2019年以前であれば、検疫はただゲートを通過するだけ、入国審査は自動化ゲートでパスポートを読み取らせて顔認証、そして、ターンテーブルで預け入れた荷物を受け取ったあとに、あらかじめ用意した紙の税関申告書を税関検査場のゲートで係員に手渡して通過して出口に向かっていた。

Visit Japan Webサービスは、これらの3ステップを、すべて電子的に行えるようにするもので、利用するにはあらかじめ登録などの手続きが必要だ。帰国日までの適当なタイミングでスマホなどを使って手続きしておく。帰国予定の登録は日本到着予定時間の6時間前までに済ませる必要がある。

サービスを最初に使うときには、本人情報を入力して新規アカウントの登録をしておく必要がある。メールアドレスと任意のパスワードでアカウントを作成、届いたメールで認証したあとに、パスポート番号などの利用者情報を入力、帰国便等のスケジュールを登録する。

パスポートの読み取りは、スマホのカメラでOCR入力できる。ちなみにパスワードは10文字以上で英大文字+英小文字+数字+記号の組み合わせが求められる。これはけっこう難関だ。

また、検疫手続きについては、ファストトラックが使える。簡素化された検疫手続きで、ワクチン接種証明書アプリのスクリーンショットを使って登録する。登録を受け付けたセンターが、その証明書を確認後、ステータスが赤から青に変わる。証明書アプリのスクリーンショットを撮って、それをアップロードするというステップがサービスに最適化されていないので、OS標準の機能で撮影からアップロードまでを行う必要があり、ここはひとつの難関だといえる。スマホの扱いに慣れ親しんでいなければまず無理だ。

記入がいらない項目には注釈があるといい

いったん登録した本人情報などは、以降の旅行で何度も使われるが、帰国についての情報については旅行ごとの予定登録が必要だ。便名や日付の入力程度ですむ。「滞在先・ホテル名」の入力欄があるが、日本人で日本に住所があればその入力は必要ない。入力が必要ないことが明記されているわけでもなく、このあたりのナビゲートがお粗末だ。

登録が完了すると、入国審査のためのQRコードが発行されて画面に表示される。これを、入国審査の自動機にスキャンさせて入国することになる。

また、税関申告は、以前、紙の申告書に記入していた要素をウェブサービスで入力して登録しておくと、QRコードが表示できるようになり、それを税関のゲートでスキャンさせればいい。

進む入国のデジタル化、一方で事前登録のハードルも

同伴家族の分も含めて、ワクチンを接種している日本人が、特に税関申告もなく普通に帰国する分には、すべての手続きをワンストップで済ませることができる便利なサービスだとは思う。入国検疫は厚生労働省、入国管理は法務省、税関は財務省と、異なる省庁が管轄しているサービスをワンストップでまとめるのは、それなりの苦労があっただろう。ここはひとつデジタル庁の仕事を評価したい。

ただ、その利用準備たるや、すべての人が、自在にスマホを操れるわけでもない以上、やっぱりハードルが高い。スマホとパソコンを横断して同時並行で使えるサービスになっているのが救いだが、これまでの紙の書類による手続きならそれなりにできた人でも、サービス利用ではお手上げで、代理申告を旅行代理店に依頼しなければならないようになってしまうのでは本末転倒だ。

また、たとえ、スマホの操作に慣れていても、自動機の前に立って初めてQRコード等を表示する旅行者は少なくない。それだけで渋滞してしまう。まるで、切符自販機の前に立ってから行き先までの料金を確かめ、やおらサイフを出して切符を買うようなイメージだ。後ろに立った人は、その様子を見てイライラするだろう。いろいろと解決しなければならないことは山積みではあるが、少なくとも半歩以上は進んだ感想を持った。これもコロナがもたらした社会の変革のひとつだといえる。悪いことばかりじゃない。