国内配信大手のU-NEXTがParaviを運営するプレミアム・プラットフォーム・ジャパンと経営統合、U-NEXTが存続会社となってParaviのサービスがU-NEXT内に移管することになった。これによって同社は370万人以上の会員を抱える国内製で最大の動画配信プラットフォームとなる。
U-NEXTとParaviが3月末で統合、国内製では最大勢に
現在のParaviは、放送系の配信プラットフォームとしてTBSとテレビ東京のコンテンツ配信を担っている。少なくとも2023年7月をめどにサービスがU-NEXT内に移管し、Paraviの現ユーザーは現行の料金のままParaviに加えてU-NEXTのコンテンツを視聴できるようになる(一部ジャンルは対象外)。
今、Paraviは1,017円/月、U-NEXTは2,189円と、金額的には倍近い開きがある。ただ、U-NEXT内の有料コンテンツを楽しむために、U-NEXTの月額会員は継続ポイントとして1,200円相当/月が付与されるので、それをのぞけばほぼ同等だ。
価格の目安がParavi相当にシフトすれば、結果的にU-NEXT会員は、継続ポイントのメリットはないものの、会員一人当たりの会費の値下げが起こるのと同じ結果となる。U-NEXTを退会して、Paraviに入り直すユーザーも出てくるだろう。それが総売上の低下につながらないように、新規の会員を増やしていくことでビジネスを推進する必要がある。
同社では、ネット系と放送系それぞれの統合は国内初としている。ただ、ユーザー目線でいうと、Amazon Prime VideoのチャンネルとしてFODが提供されてシームレスに楽しめたりもする。ただし、価格的には単独でFODと契約するのと変わらない追加料金がかかる。
その一方で、ネット系と放送系で人気コンテンツを融通しあうような動きもある。たとえば、2023年1月期のドラマでは、関西テレビのドラマ「罠の戦争」が、FODはもちろん、Netflixでも配信されているし、有料だがU-NEXTでも楽しめる。
テレビ番組がネット配信されるトレンドは歓迎
現在の放送系コンテンツは、地デジコンテンツを、民放公式テレビ配信サービス「TVer」で1週間だけ見逃し無償配信、以降は各テレビ局の公式配信サイトで有料視聴というパターンで楽しむ仕組みになっている。
もし、放送期間半ばで話題作に気がついて、最初から全話を見たいと思ったら、各局の公式サイトに1,000円程度の料金を支払って会員になって見るしかない。それでも映画館で映画を一本見るよりも安いのだからコストパフォーマンスは高いともいえる。それでももともとは無料の番組、録画していればそれこそ本当に無料でいつでも楽しめるコンテンツにカネをかけるのはいやだというユーザー層も一定数いる。
東京の地上波でいえばNHKオンデマンド、Hulu(日テレ系)、Paravi(TBS系)、FOD(フジテレビ系)、TELASA(テレビ朝日系)を全部購読すると、5,000円を超えてしまう。ユーザー目線では、これらが統合して、もう少し割安に各社の番組をリーズナブルに楽しめるようになってくれればと思う。
だからこそ、各社の番組がコンテンツ卸しとしてネット系で配信されるトレンドは歓迎したい。これがサイト丸ごとになる兆しがあるのかどうか。今回のU-NEXTとParaviの統合が、他局の公式サイトにどのような波紋を拡げるのかは気になるところだ。
録画文化は終焉するか、細々と生き残るか
結局のところ、放送コンテンツのネット配信は、日本における録画文化の終焉への第一歩だ。ビデオレコーダーは、放送コンテンツのリアルタイム視聴を排除したようなものだが、その完成には、50年近くの時間がかかった。
次にくるのは録画文化の排除なのだが、こればかりは細々と続くのではないかとも思っている。というのも、コンテンツホルダーが、今、オンデマンド視聴できるコンテンツを、未来永劫見せてくれるとは限らないからだ。
このことは、サブスク文化全体にいえることであり、永遠に手元に置きたいコンテンツは、録画するなり、購入するなりして、カタチのあるメディアに記録された状態で保管する必要がある。それを再生できる機器がなくなることに怯えながらそれを続けるのだ。
ちなみに、この季節になると見たくなる映画「私をスキーに連れてって」(1987年)は、現時点でなぜかオンデマンド配信がなく、手元のDVDでしか楽しめない。はてさてどうしたものやら悩みのたねではある。そういうものなのだ。