川崎重工業、ティアフォー 、KDDI、損害保険ジャパン、menu、武田薬品工業の6社が、5G通信による遠隔監視で運行する配送ロボットを使って、食事や医薬品などを自動配送するプロジェクトを実施中だ。東京都の「西新宿の課題解決に資する5G等先端技術サービスプロジェクト」における取り組みとして、2023年1月23日から同年2月10日まで運用する。
ロボットで医薬品を自動配送、注射針の回収なども
人口減少にともなう労働力不足によって、物流業界の人手不足は社会課題となりつつある。そんななかで、新たな配送手段を確立し、人々の暮らしに支障がないようにしていく必要がある。
今回のプロジェクトは、川崎重工、ティアフォー、損保ジャパン、KDDIの4社で自動配送サービスのパッケージを提供し、menu社がフード、タケダ社が医薬品のカテゴリで利用、それぞれの課題を抽出していく。
たとえば、医薬品の場合、オンラインで診療を受けた患者が、ロボットに医薬品を自動配送させたり、また、使用済みの注射針などの回収させたりする。
患者はこれで、大きくかさばる処方薬や、使用済み針などの医療廃棄物を持ち運ぶ必要がなくなる。デモでは血友病患者のケースが想定されていたが、3カ月分の処方薬は大きなカバン3袋分もあるそうだ。
もちろん、診療もオンラインなので、自宅にいながら通院しているのと同等の治療が受けられ、患者はさまざまな負担が軽減されるのに加え、医療廃棄物の回収も非接触で行われるために、不慮の事故などの懸念が払拭されるという。
走行はフルオート、スマホのバーコード表示で荷台を開け閉め
今回の実験で使われる自動走行ロボットは、スマートフォンに表示されたバーコードをかざすと荷台が自動的に開き、そこに荷物を格納、もういちどバーコードをかざすと荷台が閉じて自動的に目的地に向かう。
目的地に到着したら、受け取る側が同様にスマートフォンのバーコードで荷台を開閉して荷物を受け取る。これは医薬品もフードサービスも同様だ。温度管理などにも支障がないように工夫されているという。人間が追跡して万が一に備えているが、実際の走行はフルオートだそうだ。
ロボットが行き交う光景が日常になる日
ほんの少しの未来、街の中には、こうした自動走行ロボットが行き交うことになるのだろう。ドローンによる配達は派手で未来感があるが、ロボットの自動走行の方が現実的なイメージもある。
ただ、課題は、あちこちにある段差だ。これは、ロボットのみならず、人間にとっても大きな負担だ。それを克服すべく、ある程度の段差であれば平気で乗り越えていくような自動走行ロボットの開発が続いている。今回使われるロボットも同様だ。
今回は東京都新宿区・西新宿という超のつく大都会での試みだが、東京とはいえ、西新宿から10分も電車に乗ればごく普通の住宅地が拡がり、住宅が密集している。その住民が西新宿と同等のサービスを受けられるようにするにはどうすればいいのか。
処方箋薬局がたくさんあって、多くの市民は院外処方を選択しているなかで、それぞれの薬局がこうした仕組みを使えるようにするべきなのか、それとももっと別の方法を考えるべきなのか。電子処方箋の仕組みはどのように活かせばいいのか。考えなければならない課題は山積みだ。