Ankerが、日本交通をはじめとした東京都内のタクシー車両に同社製品の充電ケーブルおよび特別ケーブルホルダーの設置を開始する。タクシー車両へのAnkerグループ製品の常時設置は今回が初で、約500台から展開を開始し、今後は2023年3月頃を目処に約4,000台以上に拡大する予定だそうだ。

  • Ankerが都内のタクシー車両に充電ケーブル・特別ホルダーを設置する。短い移動中に、多少なりともデバイスを充電できる機会が得られる

    Ankerがタクシー車両に充電ケーブル・特別ホルダーを設置する。短い移動中だが、多少なりともデバイスを充電できる機会が得られる

今回の展開は、Lightning用、USB-C用、microUSB用の3種類のプラグをまとめたケーブルで、あらゆるスマホやタブレットへの充電に対応できる。具体的な製品としては、約12,000回もの折り曲げテストをクリアした高耐久な「Anker PowerLine II 3-in-1 ケーブル 0.9m」が使われる。今回のために特別に設計された専用のケーブルホルダーにマグネットで吸着するようにして、使い勝手を高めている。

ただ、USB Power Deliveryによる急速とはいかず、USBの標準的な電力としての5V/2.1Aでの充電となる。電力としては約10Wだ。

都内のタクシーでLightning、USB-C、microUSB充電が可能に

公共エリアでのUSB充電は、かなり当たり前的に浸透してきた感があるが、一般的な社会から見たUSB充電のイメージはUSB Type-Aの板状プラグを使うものであるようだ。あの板状プラグこそがまだまだ一般的なUSBのイメージだ。

当面、これは変わりそうにないが、なんとか早く変えて行く必要があるともいえる。100年以上変わっていないACプラグとコンセントのようにはいかないということだ。

iPhoneにしても、各社のAndroid端末にしても、装備としてUSB Power Deliveryでの急速充電ができるのに、新たに充電器やケーブルを購入する際に、ACアダプタ側やケーブルの片端がUSB Type-Aのものを選んでしまうパターンはかなり多いようだ。だがそれでは急速充電はできない。

タクシーに乗っている時間といえば、多くの場合30分に満たないのではないだろうか。その短い時間に、いかにたくさんバッテリーを充電できるかは重要な問題だ。短時間に少しでも多くの電力を蓄えられるほうがいいに決まっている。

ただ、USB Power Deliveryによる急速充電規格は、今回使われるケーブルのような、複数のプラグが合体されたタイプのケーブルは対象外だ。通常充電になり、急速充電はできないことになっている。急速充電できればほぼ倍の速度で充電ができるのにと思うと、ちょっと残念だ。

急速充電のためには、両端がUSB Type-C、または、片側Type-C、片側Lightningのプラグを持つケーブルが必要だ。また、充電アダプタ側はケーブル直付けか、USB Type-Cポートが必要となる。

Ankerのようなベンダーが、今回のような取り組みをするのであれば、急速充電対応の仕組みも用意してほしかったところだ。それで未来のエンドユーザーに新たな充電知識を得てもらえるかもしれない。せっかくの機会がちょっともったいないことになってしまっている。

JALもUSB Type-C充電できる取り組みを継続

パブリックスペースにおけるUSB充電はUSB Type-Aを使うのが当たり前という状況が長く続いている。よほどのマニアでもない限り、それが当たり前だと思ってしまっても仕方がない。万が一の場合に備え、緊急充電のためだけに片側USB Type-Aの端子を持つケーブルをカバンに忍ばせているユーザーも珍しくない。目の前に端子があるのに、バッテリ切れ寸前の自分のスマホが充電できないといったことが起こってしまうのを回避するためだ。

ただ、日本航空(JAL)の航空機のように、積極的にUSB Type-C端子を備えた充電用端子を提供するケースもある。2019年からの取り組みで、けっこうな期間が経過している(ニュースリリース)。これは頼もしい。

さすがにパソコン充電ができるほどの大電力が得られるわけではないようだが、プラグの向きを問わずに装着できるだけでもうれしいし、普段使っているのとは異なるケーブルを別途用意しなくていいのもいい。

関係各社にはぜひパブリックスペースの充電端子のUSB Type-C化をどんどん進めていってほしい。Ankerの今回の取り組みも、JAL機のように、端子を用意するだけで、自前のケーブルを装着すれば、急速充電対応の同社製アダプターの能力を使えるようにすることも考えてもよかったのではないだろうか。