参議院選挙が終わった。結果は予想通りといったところか……。それにしても選挙があるたびに思うのは、そのデジタル化だ。たぶん、投票用紙読取分類機なども積極的に使われ、バックヤードでは高度なテクノロジーを使う機械化が進んでいるのだろう。でも、投票所に入場し、鉛筆で紙に書いて投票し、それを開票するというシステムは変わっていない。
また、街のあちこちに選挙ポスターの掲示板が設置され、入場票は自治体から郵送されてくるし、選挙公報もポストに投函される。
だから、デジタルのデの字にも縁がない立場でも選挙への参加は可能だ。開票作業の読み取り分類機などは、きわめて高度なテクノロジーに支えられ、はるか昔に定められた公職選挙法に準拠することが最優先で守られているのだろう。当然、膨大なコストだ。でも、人件費より安いということか。
コロナが後押し? 必要システムのデジタル化
選挙くらい、すぐにデジタル化されるだろうと思っていたのだが、そんなことを思うようになってからすでに四半世紀近くが過ぎてしまった。あのころは、手元のパソコンなどで、リモートで自由に投票が出来るようになっていると信じていた。
そうはいっても、コロナが推し進めた加速度的なデジタルトランスフォーメーション(DX)は、かすかながらもその気配を感じさせてくれる。
たとえば、今は、第4回目のワクチン接種の予約が始まっている。対象者が60歳超ということもあり、1~2回目のときのように、予約しようにも、全然電話がつながらないといったことはないようだが、インターネット経由での予約の仕組みはかなり洗練されていることを、シニア層には知ってほしい。
4回目接種は、3回目の接種から5カ月を経過した時点で受けられる。予約システムを試してみたところ、接種券がまだ届いていなくても、ちゃんと5カ月後のタイミングから集団接種会場での接種予約ができるようになっていた。このシステムさえ使える環境にあれば、何の問題もない。
予約の際に必要な接種券番号は1回目のときからずっと同じだ。つまり、接種券が手元に届いていなくても予約そのものはできるのだ。これをちょっと進化させれば、メールやウェブページだけで接種券送付から予約、接種完了の記録の仕組みをデジタル化できるはずだ。そして、それをさらに接種証明などの仕組みにつないでいってほしい。
選挙のデジタル化が参加の“敷居を下げる”
いろんなケースが将来のDXへの予行演習に近いものとなり、それとは別にマイナンバーカードの浸透も進み、さまざまなお膳立てが着々と進められている。25年間では無理だったが、今から25年後には完全なデジタル化が実現していると期待してもよさそうだ。
投票日の直前には、まさか日本でこんなことが起こるのかと思えるような悲惨な事件もあった。きっと、今後は、街頭演説などについても、いろいろな制限ができるだろう。いっそのこと、うるさいし迷惑だしというような理由から、街頭演説は全面禁止といったことにもつながる可能性もありそうだ。
選挙のデジタル化が、選挙という政治への参加の“敷居を下げる”ことにつながり、特に若年層の投票率を底上げするような結果につながるのが望ましい。
もっとも、投票したいと思える信頼できる政治家がちゃんと立候補してくれるかどうかは別の問題だ。それに信頼できると判断する根拠がきちんと伝えられるかどうかも怪しい。投票するときに感じる悩みは、まず、そこだったりする。