尼崎市のUSBメモリー紛失事件、今なお、話題は尽きない(尼崎市による告知)。
46万人分の個人情報が入ったUSBメモリーを紛失し、発見に至った一連の事件だが、SNSなどに書き込まれるメッセージを見ていると、人それぞれのITに対する意識がほんとうにまちまちなことに気がつく。
会見ではUSBメモリーにかけられたパスワード桁数がわかる場面も
不謹慎ながら笑ってしまったのは「USBメモリーを純金で作って時価総額数百万円のデバイスにすれば、こんなぞんざいな扱いはされないはず」というメッセージを読んだときだ。
もしかしたら、それがいちばん有効な紛失防止策かもしれない。そんなものをカバンに入れた状態で、一人で飲み屋には入れない。持ち運びには必ず2人以上でといったルールがつきまとうことになるだろう。あるいは、持ち出し禁止になるか……。
担当職員がパスワードの桁数と文字種を公開したことも話題になった。それだけの情報で解読に要する時間を大幅に短縮できるという。
今回の事件では、データがコピーされたような形跡はなかったようだが、もし、何らかの方法で暗号化された状態のままコピーされていて、パスワードの桁数と文字種のヒントで解読されたとしたらまずい。今回の事件の副作用が10年後、20年後に明確になるのかもしれないのだ。
USBメモリーが「USB」と呼ばれるチグハグ
もうひとつおもしろかったのは、一部の報道において、紛失したデバイスが「USB」と表記されていたことだ。これについてもSNSでは大きく話題になった。紛失したのは「USBメモリー」であって「USB」ではない。そもそも「USBを盗まれる」というのはどういうことかといった具合だ。ご存じの通りUSBは規格の名前だ。
これについては、一般的に「USB」と呼ばれているのは「USB規格でデータを転送する不揮発性メモリーを使ったストレージデバイス」のことだが、それを「USBメモリー」と表現してしまうと、一般市民はかえって混乱してしまうという論調もあった。
この10年くらいの間に、一般的なITリテラシーはかなり高いものになったが、こういう細かいところに、いろんなチグハグが残っている。冒頭に引用した尼崎市の事案説明ページでも「USBメモリー」と「USB」が混在している。
ちなみに100均でスマホ充電用のケーブルを探すと、ほとんどの場合、USBはType-Aの標準コネクタのことを指す。つまり、板状のコネクタをUSBと呼び、片側がLightningであれば「USB - Lightningケーブル」と称している。これまたやっかいだ。
解決すべきテーマが事件の中に凝縮している
今回の尼崎の事件は、ITの上流から下流まで、起こったこと、対処、その報道すべてが突っ込み処満載の事件として、後世に残ることになりそうだ。
インターネットから切り離されたネットワークと、そこに蓄積されたデータ、さらに在宅勤務に代表されるテレワーク、閉じたネットワークとオープンなネットワークの接続性、そしてセキュリティを確保する方法、業務の委託先、再委託先との関係性などなど、これから解決されなければならないというか、本当は、とうの昔に解決しておかなければならないテーマがひとつの事件の中に凝縮されている。
今回の事件の要約は、将来的にITリテラシーの教科書に事例として掲載されてもいいくらいに考えなければならないポイントが満載だ。