楽天モバイルが新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表、2022年7月から新プランに全面移行し、既存ユーザーについても自動的に移行されることになった。ワンプランのみというシンプルさ、わかりやすさはそのままだ。
ただ、従来のプランでは、データ通信量が1GBを超えない限り、月額実質ゼロ円だったものが、新料金プランでは1,078円が課金されるようになる。新料金最初の2カ月が無料で、続く2カ月はポイント還元により、10月末までは実質ゼロ円が続くが、11月からは実質的な課金が始まることになる。この新プランへの移行を知らないで予備回線などとして放置している加入者にとっては、寝耳に水の課金となる。
「使わなければタダ」のはしごが外れる
使わなければタダという料金体系には、賛否両論あるとしても、このハシゴの外し方には複雑な印象を持った。実際、その発表後には、SNSなどであちこちに怒りのメッセージを見つけることができた。どのようにすれば炎上することはなかったのかはわからないが、実際に、同社にとって負担だったのは、使わないで回線を維持するだけのユーザーたちだったはずだ。
このゼロ円運用を始めるときの三木谷社長のコメントは「1GBくらいだったらまあいいか……」、といった太っ腹なものだったのを覚えているが、「まあいいか」では済まないことがわかった、ということなんだろう。
auのpovoも、24時間使い放題や、1GBデータ通信といったトッピングによる機能付加をしなければゼロ円での運用が可能だ。だが、その体系がなくなることはないようだ。ただ、povoの場合は、半年をめどにトッピングを利用しない、つまり、課金がなかった契約については、解除される可能性があるとされている。だから、使わない状態を永遠に続けつつゼロ円で回線を維持するということはできないことになっている。
基本料金はサービス維持のための課金
結局、基本料金というのは、サービスを使っても使わなくても必要な料金であり、そのサービスをいつでも利用できるようにしておくための維持費としての課金だということだ。
事業者としては、サービスを利用してくれないユーザーの個人情報を抱え、さらに、いつでもサービスを利用できるような状態でスタンバイしておく必要がある。使ったら使った分だけコストが発生するというわけではなく、エンドユーザーからは見えない維持コストがかかっている。
そんなコストに依存し、負担しながらも、ゼロ円をサービスのセールスポイントにしていた同社は、当然、損益はわかっていたはずで、それを今さらなくしてしまうというのはフェアではない。
せめて全員が新プランに自動的に移行するのではなく、より魅力的な付加サービスを提案した上で、希望者のみが移行できるようにするべきではなかったか。そして、いっさいサービスを利用しないユーザーについては、十分に長い猶予期間を設定した上での契約解除といったステップを踏むべきだった。
「自動で値上げ」は動画サブスクにも起こりうる
こういう問題は、コンテンツのサブスクリプションサービスでも出てくるんだろうなと思う。たとえばTVerは、民放各社のコンテンツをワンストップで1週間だけ無料で視聴できるサービスだ。
1週間を超えてドラマなどの一気見をしたいのなら、TVerではなく、各社の個別サービスに加入する必要がある。個人的にはUI/UXなどが、放送局ごとに異なるのはよくないと思うので、できればTVerの中に閉じたサービスとして提供してほしいのだが、それでも基本サービスとして1週間分の見逃し番組はタダで見られるけれど、それ以上のオンデマンド視聴には料金が必要という体系が、わかりやすく提示されている。
局ごとに加入と退会をうまく管理して最低限のコストに抑えるようにすることができればリーズナブルなサービスだといえるが、いちいちそれを考えるというのはエンドユーザーにとってはけっこうな負担でもある。そこをなんとかするのが、事業者をまたいだサブスクリプションサービスだし、TVerに期待される面でもある。
楽天モバイルは、エンドユーザーの期待することとは、真逆の展開で炎上を招いてしまった。誤解を怖れずにいえば、正しい、正しくないというのは、この際、関係ない。ここをどう説得し、収束させるかについて、同社の手腕が問われる。次の料金プランにおいて、仮に値上げがあっても、そちらに自動移行ということが起こらないとは限らないという前例を作ってしまったのだ。そんなことは絶対にないとはいいきれないはずだ。