アステリア、サイボウズ、レノボ・ジャパン、ZVC Japan(Zoom)が、「未来の働き方を考える」調査を実施し、その結果を発表した。初の緊急事態宣言発令から2年が経ったことを機に、全国の20~60代のフルタイムで働く就業者2,000名を対象に「これからの働き方を考える」というテーマで、4社合同の調査をしたという。
調査結果の要点としては次のような事項が挙げられている。
テレワーク制度は大企業ほど浸透している。小規模企業ほどテレワークに懐疑的な意見が多い。
テレワークに対し一般社員よりも管理職の方が社内コミュニケーションの課題を感じている。
オフィスが必要な理由は「資料やデータを保管する」が上位。「コミュニケーションの場」は意外にも下位。
若い会社はワーケーションや移住などへの希望が強く、コミュニケーションへの懸念も少ない。
完全テレワークなら住みたい都道府県、大都市圏が強く、ワーケーションでは一部の観光地も上位に。
新しい働き方で変わるオフィスの意義
概ね、想像通りの結果という印象だ。ただ、みっつめの項目を見ると「コミュニケーションの場」が必要だからオフィスが必要というわけではないようだ。
サイボウズ社長の青野慶久氏は、この調査の発表の場で、コロナ禍によって、コミュニケーションツールとして、自社内でサイボウズの利用が激増したことに言及した。コミュニケーションツールを売っている会社が、実は、コミュニケーションツールをあまり使っていなかったことが露呈したとも。
いずれにしても、約6割の人が、今後もオフィスはあった方がいいと回答している。しかも年齢層が高いほどオフィスはあった方がいいと思っているようだ。
これを若者のオフィス離れととるべきなのか。それともITの利活用によるコミュニケーション機能の充実によるものだととるべきなのか、まだ、結論は出せない。それでも、今後もオフィスがあったほうがいい理由として、業務に使う機器があることや、自宅より業務に集中できること、資料やデータを保管することができるといった要素が上位に上がっている。
基本的には、ITで代替できないものがオフィスにはあるが、それはコミュニケーションではなく、コミュニケーションについてはITが支援しているということがわかる。
ただ、オフィスがなくてもいいと思っていても、テレワークしにくい、できない理由として、「コミュニケーションが取りにくい」ことが上位の理由として挙がっているのを見ると、まだまだITがやれることは多いはずだし、それはリアルなオフィスが調達するべき案件ではないともいえる。
大企業ほどテレワーク制度が浸透している
個人的に気になるのは、テレワーク制度が大企業ほど浸透しているということだ。考えようによっては、大企業のテレワーク制度は、小規模企業の犠牲によって成り立っているともいえる。
これからコロナ禍が一段落しても、大企業についてはもう以前の状態に戻ることはないかもしれないが、小規模企業については元の木阿弥的に逆戻りということも起こりうる。その二極化は、通勤に伴うラッシュアワーの混雑緩和などにもつながるだろうが、なかなか複雑な問題を内包しているようにも思う。
大企業の従業員は、オフィスに行かないことに効率と仕事のしやすさを見出して、経営者がそれに応え、小企業の経営者は従業員をきめ細かく管理できなくなるようなことに不安を感じているかもしれない。
コロナ禍に突入して2年が過ぎ、コロナネイティブともいえる世代が、だんだん組織の主力戦力となって活躍することを求められる時期がやってきている。彼らはかつて、人類が扱ったことのない世代ともいえる。つまりバーチャルネイティブだ。
一番いい働き方を選べる「ハイブリッド」が望ましい
その怖さと頼もしさを理解できる経営者と、これまでのノウハウで管理を続けた経営者。テレワーク制度が完全に近い職場であっても行ってみたいと思う心地よいオフィス。
世の中全体は、自分自身の判断でいちばんいいものを選べるハイブリッドな状態にならなければ、コロナ禍を克服することはできないし、たとえコロナが収束したとして、この数年の経験を未来に活かすためには、会社という組織を仮想化してしまうことまで視野に入れなければならないのかもしれない。
コロナ/バーチャルネイティブの世代は、そこにチャレンジしなければならない。そこに疑心暗鬼になっていては何も始まらない。そうはいっても怖い。変えること、変わることは怖いのだが、変わらない世代がそこにあるのなら話は別だ。