1グラム1ワットが新しい当たり前になるようだ。

いきなり何の話かというと充電用のPDアダプタの話題だ。Ankerが新たにリリースしたAnker 711 Chargerは、従来製品のNano II 30Wの後継製品で、そのままNano II 30Wを名乗るものの、重量は47グラムから34グラムに、サイズも約32×28×27mm(プラグ部を含まない)と、現行機種よりもひとまわり小さくなった。

  • 中央がNano II 30Wの新製品。これは小さい……

    左からAnker PowerPort III Nano 20W、Nano II 30Wの新製品、Nano II 30Wの現行製品

約3cm四方の小型USB-Cチャージャー

これまでも、このシリーズの30Wチャージャーは、コンパクトさで定評があった。GaN IIシリーズの中では最小で、プラグ部分が折り畳めないことを許容できるのなら、最高の選択肢だった。

そして、新チャージャーの筐体を見て唖然とした。Anker PowerPort III Nano 20Wかと勘違いするくらいのサイズだ。もう、20Wチャージャーの立場がない。

Anker 711 Chargerは、USB PDおよびPPSの対応で、PDでの20V×1.5Aの30Wが最大出力となる。30Wのチャージャーがあれば、スマホはもちろん、たいていのパソコンに充電ができる。

本当は45Wあれば安心だが、30Wの給電でも、負荷の高いときにはバッテリーが消費されることもあるが、通常の使用ならほとんど心配する必要はないだろう。

そんな製品の登場を見て思いついたのが、充電用アダプタの重量はワットあたり1グラムというのが当たり前になりそうな勢いだというのが、冒頭の新しい当たり前だ。

バッテリー切れを意識しない世界へ

Nano IIのシリーズのうち、今回刷新されたのは30Wのものだが、既存製品を見ると、45Wは68g、65Wは112gある。やはりちょっと重い。これがワットあたり1グラムになればきっと世界が変わる。

充電されるデバイス側も、大電力を供給すれば、それに応えて、より高速に充電ができるようになってきている。これまでのモバイルデバイスのチャージャーは、20W前後のものが広く普及していたが、デバイス側の高速充電対応に呼応するように、次第に30W充電が可能な製品が増えてきている。

充電に使うチャージャーが軽量化されコンパクトになった上に、より大きな電力を供給できるようになり、充電される側も大きな電力を受け入れて、それを活かした高速充電ができるようになってきている。

コロナ禍や災害を経て進化する充電器

この調子でいくと、バッテリーが切れそうになってから充電しても、ほんの少し待てばすぐに充電が完了するような世界がやってくる。ほんの少し先の話だ。

そうなれば、きっと、世の中の充電に対する考え方も変わる。いつも満充電に近い状態にしておかないと不安だったり、モバイルバッテリーは外出に欠かせないという状況ではなくなる。

コロナのせいで外出の機会は減っているので、モバイル機器が活躍する場面も少なくなっている。だからバッテリーのことはあまり気にしなくなってはいる。かと思えば、地震が起こったりして、災害に備える装備が気になったりもする。そんななかで、チャージャーのようなデバイスは、着実に進化をしているのだ。

安全を確保できるのなら、チャージャーは小さいにこしたことはない。こうした製品を見ていると、そのうち片側がACプラグになっていて、その中にチャージャーが内蔵されたチャージ用ケーブルが出てきそうだという妄想まで浮かぶ。