先日、電車に乗っているときに、ベンチシートの向かい側に座っている女性が花粉症対策の本を真剣に読んでいるのをみかけた。カバーをつけているわけでもなく、遠くからでもしっかりと表紙を確認でき、書名を知ることができた。

よほど深刻な症状なのか、それとも、万が一くしゃみなどをしてしまっても、それはコロナのせいではなく、花粉症のせいだとわかってもらうための気配りなのか。もし後者だとしたら、中身がまったく別の本であっても、カバーをつけておけば十分に役目を果たしてくれそうだ……。

ついにiPhoneがマスク付きの顔認証に対応

コロナ禍になって3度目の春がやってくる。公共の場ではマスクをつけるというのは日本人にとっては当たり前のことになりつつあるが、世界的にはそうでもないようだ。それでもアップルは新規にリリースしたiOS 15.4で、マスクをしたままFace IDのロックをiPhone単体で解除できるようにした。

対応機は、iPhone 12以降だが、「やっと」、「ついに」的なコメントがSNS上で目立つ。やはり、待望だったということなのだろう。3年間もかかってしまったことの背景には、やる気があったなかったということ以前の理由もあったにちがいない。

  • 「iOS 15.4」では、iPhone単体で、マスクをしたままFace IDでロック解除できる機能が加わった。対象はiPhone 12以降のiPhoneだ

    iOS最新アップデート「iOS 15.4」では、iPhone単体で、マスクをしたままFace IDでロック解除できる機能が加わった。対象はiPhone 12以降のiPhoneだ

生体認証の方法として、Androidスマートフォンでは指紋認証が優勢だが、iPhoneではいったんiPhone XでTouch IDによる指紋認証が姿を消し、Face IDによる認証だけになった。そしてコロナに襲われた。

Apple Watchとの併用によるロック解除はできていたにしろ、対応はとにかく中途半端だった。何しろ、人前でマスクを外さないといけないというのは大きなストレスだし、なによりも対面する相手に不安を与えてしまう。だから、今回のマスクを付けたまま解除ができるようになったことが歓迎されるのは当然だ。

アルコール消毒で指紋認証がうまくいかなかった日々

いずれにしてもマスク着用の社会はこの先も当面は続くことになるのだろう。それが本当に効果があるのかどうかは議論を続ける必要があるが、自分自身ができるだけの対策に努力し、周辺にも気遣いをしているということをアピールするにはもってこいだ。李下に冠を正さず的な意味合いもある。

コロナ禍が始まった頃には、ことあるたびに手指を消毒するアルコール類で、皮膚が荒れに荒れてしまい、指紋認証がうまくいかないことも少なくなかった。そのたびにイラッとしながらパスコードなどを入力していたのだが、3年近く、こういう状況が続くと、指の皮膚も耐性ができてきたのか、消毒の回数が増えているにもかかわらず指紋で困ることは少なくなった。

もっともアルコールで濡れた状態では指紋認証は難しいので、消毒直後にポケットからスマホを取り出して操作するというときには不便を感じたりもする。それに寒い時期は手袋を欠かせないという人にも指紋は不便だ。

これから虹彩認証が再注目される日が来るかも

世の中のトレンドは非接触だ。だから本当は指紋認証というのは時代遅れなのかもしれない。生体認証の方法はたくさんあるが、顔や指紋と違って経年変化せずに一生同じであることが保証され、しかもマスクの有無にも影響されない虹彩認証などが、これから再注目されるようなこともあるかもしれない。

自分の身の回りのコンシューマー向けデバイスに搭載された虹彩認証は、FCNTのarrows Tab F-02K(2018年)がIris Passportとしてサポートしていたが、それが最後になってしまっている。製品もすでに生産終了している。

このタブレットは軽量で使いやすかったので本当に愛用したのだが、虹彩認証はちょっと時間がかかるように感じていた。でも、現在の技術なら、もっと素早く反応する使い勝手が実現できるかもしれない。FCNTにはこのあたりもぜひがんばってほしいと思っている。