コロナに振り回される歳末も2度目、また年が暮れようとしている。2021年もあとわずかだ。
秋にロールアウトが開始されたWindows 11だが、企業向けの製品にも降りてきているようだ。手元のHP Elite Dragonfly G2にもインストールボタンが表示されたので、1時間ほどかけてアップグレードした。
企業としてはWindows 11が出たからといって、すぐに移行することはなく、これから準備を始めるというところも多いだろう。本格的な移行は来春頃といったところだろうか。石橋を叩いて渡らないと、なんらかの原因で肝心の業務が止まってしまってはたいへんだ。ずっとWindows 7を使い続け、Windows 8はスキップして、ようやくWindows 10に移行した企業が、カンタンにWindows 11に移行できるはずがない。
その一方で、個人の使うパソコンは、早々とWindows 11への移行が始まっている。もちろんWindows 10に留まることもできるが、よほどの理由がない限り、普通にアップデートしてしまうだろう。
OSアップデートはアプリ互換性をチェック
OSのメジャーアップデートでは、日常的に使っているアプリケーションや周辺機器が、今までと同様に使えるかどうかをチェックしなければならない。
それはソフトウェアやハードウェアのベンダーの仕事だし、もちろんパソコンそのもののについても同様だ。企業の情報システム部門は、それを追試して、メーカーがいっていることが正しいかどうかをチェックする。
すでに量販店で購入できる秋冬新製品のパソコンにはWindows 11がプリインストールされている。
自分でアップグレードするよりも、最初からWindows 11が入っていた方が手間もかからない。一般コンシューマーは企業ほどシビアではないので、移行は早く進む。だが、今後、個人事業者やフリーランスが増えて青色申告等のための帳簿をパソコンに依存する層が増えていくと、そういうわけにはいかなくなるかもしれない。
パソコンは家電にはならなかった
四半世紀ほど前から、将来のパーソナルコンピューターは家電のような存在になると言われてきた。ところが実際にはそうはならなかった。処理性能は大幅に向上したが、パソコンの顔は以前のままだ。
それどころか、家電のコンピューター化の方が進んでしまい、エアコンのファームウェアをアップデートするといったことをしなければ安心安全には使えない始末だ。OSのアップデートなどが求められるパーソナルコンピューターは、もっと複雑になってしまった。
コロナ禍は、世の中のデジタル化を一気に加速したとされている。実際、これまでコンピューターとは無縁だった現場がデジタル化に懸命だ。
その一方で、朝の業務開始に新着メールのチェックもせず、夜になってようやくメールアプリを開くような現場もある。ファクシミリが健在で、送られてきた紙のシミとして印刷された数値をパソコンを使って再入力という現場もたくさんあるようだ。
コロナの感染者数のカウントなどは、こうした現場に支えられているといってもいい。パソコンに慣れ親しんでいる層からすれば、びっくりするほど原始的な現場だ。
教育の現場も同様だろう。現場の先生方は、科目を教えることのプロであっても、コンピューターのプロではない。なのにプロではない分野の負担がのしかかる。
デジタル化は一気に進んでも、それに人間がついていくのはたいへんだ。いろんなところで本末転倒なことが繰り返され、少しずつ、まともなデジタルトランスフォーメーションが実現する。やはり時間はかかるのだ。
5年前のパソコンでもWindows 11は動かない
Windows 11は、セキュリティに力を注いだWindows 10といってもいい。そのために、セキュリティを担保するのが難しい古いハードウェアを切り捨てた。まだまだ実用に申し分のないパソコンがWindows 11に移行できないという問題も出てきている。
当面の間は、Windows 10とWindows 11は共存し、いろいろな現場で併行して使われていくことになるだろう。もし家電だとしたら5年で新しい製品に置き換えるといったことは考えにくい。パソコンが家電だという意識でいると、5年くらいではびくともしないというイメージなのではないだろうか。だが、2016年以前に発売されたパソコンではプロセッサーの世代的にWindows 11は使えないのだ。
Windows 11を十分に稼働させられる最新パソコンでも、あえてWindows 10を使い続けるという選択肢もある。でも、それは果たしていいことなのかどうか。セキュリティ的に、本当に同等の結果が得られるのかどうか。
Microsoftはまだ、企業が利用するWindows 11について、あまり多くの情報を出していないのが気にかかる。先手先手で積極的な情報提供をのぞみたい。最終的に苦労するのはエンドユーザーなのだ。
2021年もご愛読ありがとうございました。よいお年をお迎えください。