やりたいことができるなら、スマートデバイスはそのカタチだけを気にすればいいはずだが、実際のところはそうじゃない。使っているスマホとの使い勝手の違いなどを考えると、OSの違いも気にする必要がある。
コロナ禍によって、持ち運びのしやすさが最優先だったスマートデバイスの世界が、少しだけ軌道修正された。日常的にスマホを使い続けることは当たり前だとしても、ある程度大きな画面で生産性の高い作業ができるようにしたいというニーズが高まった。
ノートパソコンやタブレットでは、Windows、macOS、Android、iOS、そしてChrome OSといったOSが稼働するものがあり、百花繚乱の製品群の中から、自分がやりたいことができる最適のデバイスを探して使う。いうのはカンタンだが、実際の選択は悩ましい。
ChromebookとAndroidタブレット、カタチもOSも異なるが……
今、手元に、富士通クライアントコンピューティング(FCCL)から発表されたばかりのChromebook 「FMV Chromebook 14F」と、ハイエンドAndroidタブレット「Xiaomi Pad 5」がある。
「FMV Chromebook 14F」は、国内メーカー初のコンシューマ向けChromebookかつローエンドとは一線を画する処理能力を備えているということで、また「Xiaomi Pad 5」は、枯渇気味だったハイエンドAndroidタブレットの市場の盛り上がりの兆しとして、注目されている。どちらもLTEや5G、GPSには非対応という点で共通している。
フォームファクタとしては、前者がクラムシェルノートパソコンでChrome OS、後者がタブレットでAndroid OSだ。
両者ともにタッチ対応で、カタチもOSも異なるが、実際の操作方法は似ているし、使うアプリもAndroidアプリとブラウザによるウェブサービスの併用で、できることに大きな違いはない。
Windows 11も、Andoroidアプリの稼働に向けて準備中で、Androidアプリとウェブサービスの併用はスマートデバイスを使うためのひとつの潮流として市民権を確保しそうだ。もちろん同様のことはiPadとアプリでもいえる。
価格には若干の差も、使用に大きな違和感はない
価格の点ではこのラインのChromebookとハイエンドAndroidタブレットでは多少の開きがあって、タブレットの方が若干安上がりのように見えるかもしれないが、それはキーボードなどのデバイスを追加するコストと相殺されるだろう。それに「FMV Chromebook 14F」が14インチ、「Xiaomi Pad 5」が11インチと、ディスプレイサイズにも違いがあるし、重量差も倍以上だ。
ただ、2種類のデバイスを併行して使ってみると、その違いはほぼ気にならなくなる。基盤となるのがブラウザーのChromeであり、それをAndroidアプリが補完する、あるいはその逆ということで、使い勝手としては多少のUI、UXの違いはあるが、それほど違和感はない。少なくともハイエンドのスマホよりも圧倒的にコストパフォーマンスはいい。
逆に、同価格帯のWindowsパソコンと比べたときにどうかというと、これが難しい。この価格帯であってもそれなりの製品なら買えてしまうからだ。とはいえ、この価格帯でのタッチ対応は難しいので、そこは譲る必要がある。これは中高年層にはあまり問題にならないかもしれないが、タッチネイティブの年代には重要な問題かもしれない。
スマホの延長にあるデバイスたちがPCとの架け橋に
大事なことはこれらのデバイスがスマートフォンの延長としてとらえられるかどうかだ。
GIGAスクール施策などで、これから初めてパソコン的なデバイスを使い始める層、そして、進学などで初めて自分のための道具を手に入れる層にとって、スマホの延長として使えるかが大事なことであり、一足飛びにWindowsパソコンというのでは世界観が違いすぎるかもしれない。
ましてiPhoneの延長として考えたときには、ガラリと違う世界観のWindowsパソコンに一足飛びのほうが、かえって迷いがない可能性もある。
どっちにしても、彼らがいずれ社会に出れば、そこで使われていて、使わされるのはほぼ例外なくWindowsパソコンだろう。だから早期からWindowsに慣れ親しんでおきたい、おこうというのも一理ある。
一般的な組織で使われるその装備や環境は、自分で自ら選べるもののではなく、使いなさいと命じられるものであり、使いこなしの創意や工夫は悪とされる。悲しいことではあるが組織とはそういうものであり、それが現実だ。
だとすれば、ChromebookやAndroidタブレットという選択は、その世界に向けた架け橋として悪くないのではないか。それで不満を感じるとすれば、十二分なリテラシーを持っているということだ。
本当に不満なら、さらに上のデバイスを目指せばいい。その向上心を行使できる期間は限られている。教育の現場にも、そのモラトリアム的な環境を楽しませてやる余裕があればいいのだが。