ソフトバンクモバイルがシャープ製のスマートフォン「AQUOS CRYSTAL」を発表した。8/19から予約を受け付け、8/29に発売の予定だ。同社が米大手キャリア「Sprint」を買収してから約1年がたとうとしているが、この製品は、その1年間の成果の第一弾となる。
「AQUOS CRYSTAL」には、ソフトバンクグループとして共同で開発したプラットフォームを採用しているという。つまり、ソフトバンクモバイルとスプリント・コーポレーションが初めて共同開発した製品となる。同社では、今後、このプラットフォームによって、ソフトバンクグループにおける製品開発の効率化をさらに進め、より魅力的な製品を提供していくとしている。
具体的にはスマートフォンを日本の市場にあわせて特殊なものにしてガラパゴス化するのではなく、世界の各地域で共通の部分をできる限り多くすることで、調達コストを削減し、地域に依存しないグローバルな製品を提供していこうという枠組みだ。
「AQUOS CRYSTAL」は、スペック的には、今、格安スマホと呼ばれているカテゴリ程度のスペックしかない。おサイフケータイはもちろん、ワンセグもない。日常的にハイスペックなスマートフォンに慣れたユーザーから見れば、ちょっとガッカリする仕様だ。
それでも、「まるで画面だけを持つ感覚で手のひらいっぱいでウェブブラウズ」と同社が表現する質感は魅力にうつるかもしれない。同じ5型スクリーンサイズの1年前の製品と比べても、小さく持ちやすくなり、手の小さな女性でも片手操作が可能になっているほどコンパクトになっている。
発表会に出席したシャープの高橋興三社長は、今、もっとも重要な通信の分野において、日本だけではなく、アメリカで挑戦していかなければならないフェイズにあって、シャープが持っている要素技術を結集し、ソフトバンクとSprintとの協業が実現できて非常にうれしいと語っている。
だが、内部的な仕様をきいてみると、この共同開発プラットフォームの意味に疑問を感じるのも事実だ。
たとえば、この製品は当然、Sprintから米国でも発売されるが、無線機としてこの製品を考えたときの仕様は、日本で発売される製品とまったく別物だ。対応周波数も異なるし、アンテナの実装にも違いがある。展示会場の係の説明では、SprintモデルにソフトバンクのSIMを装着しても使えないし、ソフトバンクモデルにSprintのSIMを装着しても使えないという。また、日本側の実機を米国に持ち込んだ場合はAT&Tでのローミングになるという。せめてソフトバンクグループとしてのSIMフリーと周波数対応はできなかったものなのだろうか。
これではシャープがソフトバンクとSprintから受注し、両者の要求に応じてカスタマイズして製品化するのとどこがちがうというのだろう。
もちろん、今後は、ハードウェア仕様も共通にしていくことは視野に入っていて、差異は次第に小さくなっていくだろう。でも、今回に限ってはちょっとがっかり感を否めない。同社では、端末開発の効率化のみならず、競合優位性のある独自仕様の端末を提供していくことが可能であるとしているが、その成果を出せるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
普段使いのケータイが、世界中どこでも使えるようになる日は、本当にくるのだろうか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)