「ラクさ」
謹賀新年。
年が明けて2021年がやってきたが、コロナの勢いは止まる様子がない。たいへんな新年になったものだが、ここはとにかく創意工夫で乗り切るしかない。
創意工夫といっても、昨年と何が変わるわけでもない。ITの力を駆使しながら、コロナとの遭遇の確率を限りなくゼロに近づけられるように努力するだけだ。一人一人の感染確率はゼロになることはなくても、日本にいる全員が真剣に取り組めば、感染の拡大は大きく抑止できるはずだ。
あらゆるものがクラウドに置かれるChromebook
個人がITの力を駆使するためにパソコンの力は絶大だ。そんななかで、パソコン未満デバイスともいえるChromebookの売れ方が尋常ではないそうだ。
ChromebookはGoogleのChrome OSを搭載したコンピューターで、パソコンでお馴染みのWindowsは搭載していない。ChromeといえばWindowsやAndroid、iOSで使うウェブブラウザーの名称として知られているが、Chromebookは、ChromeブラウザがOSとして稼働するパソコンと考えればいい。あらゆるアプリをウェブアプリとして使うのだ。
昨今のWindowsパソコンも、さすがにクラウドへの依存度が高まってきているが、Chromebookはそこが徹底している。
アプリはもちろん、作業結果としてのデータまで、あらゆるものがクラウドに置かれ、画面は、その作業の過程を映し出しているに過ぎない。もっとも、それではクラウドにつながっていないときには何もできないと困るので、ある程度のデータをローカルに置いておくことはできる。だが、それはキャッシュに過ぎない。すべてのものはあくまでもクラウドに置いたままだ。そういう意味ではパソコンの見かけをもったスマートフォンといってもいい。
それで何がうれしいかというと、突然のクラッシュや故障でも影響を受けない点にある。なにせ、すべてのものがクラウドにあるのだ。
操作中のChromebookがいきなり壊れたとしても、あるいはどこかに置き忘れて行方不明になってしまったとしても、別のChromebookを入手し、自分のGoogleアカウントでサインインすれば数十秒後には、自分の環境が目の前に戻ってくる。極端な話、同僚や同級生が使っているChromebookを小一時間拝借して使ってもまったく問題なく作業ができる。家族が機器を共用するにも便利だ。
コロナ禍に便利なデータ共有の仕組み
このChromebookの特性は、在宅勤務やリモートワーク、そしてオンライン授業などでの利用にも重宝する。なぜなら、これらの形態には、職場や学校などのAという地点と自宅などのBという地点の両方で同じことができてほしいというニーズがあるからだ。A≦Bでもなく、A≧でもなく、限りなくA=Bであってほしいというニーズだ。
もちろん、人間がA地点とB地点の間を一台の機器を抱えて往復しても同じことができるかもしれない。実際、コロナ以前はそうだった。だからこそ薄軽モバイルノートパソコンがもてはやされた。だがモビリティの確保はガマンの強制でもある。いろんなところで妥協を強いられる。
だからこそクラウドにすべてを置く。ちょうど銀行に現金を預けておけば、日本中どこのATMからでも引き出せるというのと同じ理屈だ。
かといって、世界中のパソコンがすべてChromebookに置き換わるようなことはないだろう。パソコンローカルで動くアプリの高度な機能が必要なニーズはまだまだたくさんあるからだ。それはWordやExcelなどの一般的な事務作業で使われるアプリにもいえることだ。
だが、作業結果としてのデータの置き場所としては、Chromebook的な作法に慣れ親しんでおいたほうがいい。自分にとって大事な情報を唯一無二のものにしないように心がけるべきだ。
そして、大事なデータは第三者に守ってもらおう。自分自身でバックアップや漏洩防止に勤しむことは現実的ではない。それはプロに委ねたほうがいい。クラウドに置いておくだけで、それらは任せることができるのだから、そうしない理由はない。
Chromebookはどうして「ラクチン」なのか
コロナ禍は、人々の暮らしのいろんな面に変化をもたらし、デジタルの恩恵を万民が享受する兆しを作ったともいえる。
コロナ禍を理由に、門外不出だったノートパソコンの社外持ち出しを解禁した企業も少なくないという。2019年は変わることの礎が築かれた年であるとすれば、今年は実際に変わらなければならない飛躍の年になるだろう。
大きな組織ではなかなか思い切ったことには踏み切れない事情もあるかもしれない。だが、Chromebookがどうしてラクチンなのかを、今、ここで、じっくりと考えるのは悪いことではないと思う。
というわけで、今年が良い年になりますように。このコラムのご愛読を、引き続き、よろしくお願いします。