日本マイクロソフトがSurface Pro XとSurface Laptop Goの発売を開始した。そのSurface Laptop Goが気になっている。

  • Surface Laptop Go。12.4型、クラムシェルタイプのノートPCだ

    Surface Laptop Go。12.4型、クラムシェルタイプのノートPCだ

追加された「A」キーと「あ」キーの謎

Surface Laptop Goは縦横比4:3の12.4型スクリーンを持つタッチ対応のクラムシェルノートパソコンで、重量はカタログスペックで1,110グラムとなっている。同社としては、この製品を、ビジネス向けと位置づけ、毎日の仕事強力にサポートする最も軽量なSurfaceシリーズのLaptopとして、バランスに優れたパソコンだとしている。

そこまではいい。だが、気になるのは、そのキーボードだ。フォームファクタとしては、クラムシェルノートパソコンで、スクリーンとキーボード部はヒンジでつながっている。だから、キーボードをすげ替えることはできない。そのまま使い続けるしかない。そして、このキーボードには、これまでの日本語キーボードにあった無変換、変換、カタカナ/ひらがなキーがない。その代わりに新しいキーが2つ追加された。スペースキーの左側に「A」キー、右側に「あ」キーがある。

  • スペースキーの左にあるのが「A」キー、右にあるのが「あ」キー

「A」キーでIMEをオフ、「あ」キーでIMEをオン

Windows標準の日本語入力システムであるMicrosoft IMEは、最新のアップデートであるWindows 10 May 2020 Updateで、これらのキーに好みの機能を割り当てることができるようになった。

以前もキーへの機能割り当ては可能だったが、そのためのグラフィカルインターフェースが用意されて割り当てが簡単になった。それを利用しての訴求だろうが、日本マイクロソフトとしては、「A」キーを押すとIMEがオフになり、「あ」キーを押すとオンになる使いやすさをアピールしている。

現在のIMEの状態がオンなのかオフなのかを気にすることなく、押せばオン、押せばオフを別のキーに割り当てたわけだ。

実質的には「A」キーは従来の無変換キー、「あ」キーは従来の変換キーの名前を変えただけのものだともいえる。そして「カタカナ/ひらがな」キーはなくなっている。ただ、そのおかげでスペースキーが長くなり、窮屈さはそれほどかわらない。

だが、キーの相対位置としては考えものだ。「あ」キーがこれまでの「カタカナ/ひらがな」キーの位置まで右にシフトしている。キーでいえば「<」(不等号)キーの下あたりだ。一般的なキーボードにおける変換キーは「M」キーの真下にある。

「いまIMEはオンかオフか問題」に一石を投じる

日本語IMEのオン・オフは、かなり頻繁に行う操作だと思う。多くのユーザーは、Alt+半角/全角、または、半角/全角の単体押し、変換キーの単体押しで操作していると思う。

単体でこれらのキー操作をすることで、日本語入力のオンとオフがトグルで切り替わっていた。トグルなので、オンなのにオンにしようとしてオフになったり、オフなのにオフにしようとしてオンにしてまたオフにするなどのミスを誘発していた。

今回のキーの追加と既定の設定によって、Surface Laptop Goのユーザーは、この「あ」と「A」のキーを頻繁に叩くことになりそうだ。しかし右手を「J」キーの上に置いたホームポジションのままで、この「あ」を押すのはかなり無理がある。「M」の真下にあれば自然に押せたのに、それが右に大きくシフトしているからだ。

スペースキーが長くなったのを歓迎するユーザーも多いかもしれないが、これに慣れると他の標準的な日本語キーボードを使うのはたいへんかもしれない。逆に、標準的な配列に今まで慣れていたユーザーは、この製品を使い始めるときに苦労する可能性もある。

新しい配列はユーザーに受け入れられるか

日本マイクロソフトでは、ユーザーの意見を聞きながら、今後、この配列を続けるかどうかを検討するとしているが、Surfaceのキーボードのようにすげ替えができるわけでもない以上、このキーボードでの入力に慣れてしまうユーザーはどうすればいいのだろう。

Surfaceの役割のひとつは、既存のOEMベンダーがやろうとしない改革を、先んじて世の中に指針として示すことだ。だが、今回のキー配列の提案は、将来の保証がない思いつきでやってみたように思えてならない。

Windowsを提供するマイクロソフトとして、今後はこのレイアウトを標準的なものとして考えるというなら、OEM各社も追随するだろうし、ユーザーとしても仕方がないから慣れようとするかもしれない。でも、将来の保証はないのだ。

文字を入力するというもっとも基本的な作業に大きな影響を与えるのがキーボードレイアウトだ。しかも、日本語入力にとって要ともいえる無変換キーと変換キー。変えるなら変えるで相当の覚悟を持って提案するべきではなかったか。