シリーズとしての地盤を着々と固めつつあるマイクロソフトのハードウェア「Microsoft Surface」だが、Windows 10Xが稼働する2画面対応のWindows PCであるSurface Neoの発売が2021年に延期された一方で、Androidが稼働する2画面対応のデバイスSurface Duoが9月10日に出荷開始されることが発表された。

ただし、日本での発売は未定となっている。いつのまにかIT後進国となってしまっている日本への注力度合いが気になるところだ。

  • 2画面のAndroidデバイス「Surface Duo」。米国では2020年9月に発売される予定だ

    2画面のAndroidデバイス「Surface Duo」。米国では2020年9月に発売される予定だ

ステイホームとモビリティ

Surface Duoは、5.6型画面2枚の折りたたみ構造で、開いた状態でタブレット的な使い方ができるという製品だ。2020年10月に日本でもお披露目会が開催され、本当にチラ見せのかたちで実機が披露されたが、それがようやく世に出ることになる。

Androidの二つ折りスマートフォンは各社から出ているが、マイクロソフトがそれをやるというので大きな話題になった。やはり誤算はコロナだったのだろうか。こうしたデバイスが、今、本当に求められているかどうかは難しいところだ。

ステイホームが求められる中で、持ち運んでいつでもどこでも使えるモビリティを強く意識したデバイスというのは、その立ち位置がとても微妙になりつつある。モビリティを意識すればするほど、何かを妥協しなければならないからだ。妥協を強いられてそれをガマンするほど今の状況には余裕がない。

マイクロソフトがAndroid端末を作る

Surfaceシリーズは、Windowsをハードウェア各社にOEM提供し、各社独自のハードウェアとして提供されてきたPCという器を、マイクロソフト自身が最終製品として提供するものだ。同社のハードウェアとしては、マウスやキーボードなどの周辺機器が知られていたが、Surfaceシリーズはついにパソコン本体まで提供と注目されていた。もちろん賛否両論だ。

なかなかOEMメーカーが手を出しにくい領域で、新たなWindowsの付加価値を得られるハードウェアデバイスをマイクロソフトが直接市場に届けるというのがSurfaceシリーズのめざすところだった。電話端末としては、Windows 10 Mobileがモバイル用のOSとしてうまくいかなかったこともあり、ついに、Android機としての提供となる点は興味深い。

  • 開くと8.1インチ(2,700×1,800ドット)だが、折りたたむと5.6インチ×2(1,800×1,350ドット×2)で使える

だが、その前にやることはもっとあるとも思う。たとえば同社は先日、Windows 10のスマホ同期アプリにアプリキャストの機能を実装した。スマホの画面全体ではなく、特定のアプリを起動した画面のみをWindowsにキャストする機能だ。まるでWindowsでスマホアプリが動いているような環境が得られる。まだ、Windows Insider Programでの公開で、対応機種もGalaxyシリーズに限られる。というよりも、Androidを使った新しい付加価値は、ずっと以前からGalaxy専用機能のような位置づけになってきていた。

汎用的な環境として、同社はAndroid用にMicrosoftランチャーを提供し、Windows環境との連携機能を提供してきた。また、ブラウザのEdgeもそうだ。ひとつひとつの機能は便利なので、個別のアプリとして提供して欲しいくらいなのだが、統合環境としてはちょっとつらいところがある。だが、当初はとてつもなくひどいものだった。それでも久しぶりに起動してみたところ、現時点でのバージョンを見る限りは、かなり洗練されてきているので、今後には期待ができそうだ。

自社サービスをいまの仕組みに紐付けられるか

いずれにしても、Microsoftとしては、Windowsにこだわらず、あらゆるデバイスで同社のサービスが快適に使えればそれでいいという方向だ。Windows標準のブラウザEdgeがChromeベースになったことをみてもそれがわかる。Surface DuoをAndroid端末としてリリースするのもその一環なのだろう。世の中の事実上の標準をいかにMicrosoftのサービスに結びつけられるかがポイントだ。

コロナ禍におけるGoogleとMicrosoftの動きについては、とにかく既存のリソースをこの状況にどう対応させていくかについての知恵の絞りあいのように感じている。両者のサービスをインフラとして考えたときに、もはや、MicrosoftやGoogleのサービスなしではいろいろな事業が立ち行かないまでになっているし、これからもそれは変わらないだろう。

その事実を受け入れた上で、世の中は変わらなければならないし、世の中を変えなければならない。そんな中で、両者の立ち位置の違いがいろんな場面で露呈している。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)