恒例のWindows 10 Version 2004機能更新プログラムの配布が始まっている。いわゆる2020年4月バージョン(Windows 10 May 2020 Update)だ。
PCのベンダーによっては、Windows Updateしようとしても、まだ準備ができていない旨の表示がされるが、ベンダー側での検証等の準備が整い次第、更新されることになる。また、この更新に加えてWindows 10用の新しいMicrosoft Edgeの配布も始まっている。
これらの更新には、それなりの時間がかかる。更新の間はパソコンが実質的に使えない状態になるので、適当なタイミングを見計らい、自分で更新してしまったほうがいい。というのも、たいてい、パソコンを使おうとした途端に自動更新が走り始めてしまい、いつも後回しということになるからだ。
ただ、更新は不安だ。場合によっては今まで正常に稼働していた環境で不具合が出ることもある。実際、リリース当初はいくつかの不具合が出てもいる。更新アシスタントを使えば互換性チェックを手元で行いその場でアップデートはできるのだが、Windows Updateが安全に更新するのを待つ方が安心だ。ただ、その更新タイミングを不意なものにしないためにも、手動でのWindows Updateでこまめにチェックをして、時間が余裕のあるときに作業しよう。
パソコンは「ないよりマシ」じゃダメ
渋谷区に続き、兵庫県教育委員会が、16,000台のSurface Go 2および全生徒分のOffice 365 ライセンスを県立高校向けに展開するそうだ(マイクロソフトによる発表)。学習者用端末として配備し、この9月から利用を開始するという。この導入台数は、これまでの最大規模の事例になるらしい。
最大規模といっても、兵庫県の全県立学校は162校あって、その全生徒数は約93,000名だ。16,000台のSurface Go 2が配備されたとしても全然足りない。
高校生がパソコンを紙とペンのように使えるようになることは重要だ。本当は高校生では遅すぎるかもしれない。誤解を怖れずに言えば、プログラミング思考を身につけることよりも。読み書きソロバンの道具としてパソコンを使えるようになることの方が大事かもしれない。
そして、Windowsを最新の状態に維持するといった、自分の道具としての紙とペンを、常に、安全で使いやすいように維持することを常日頃から心がけられるようにしたい。つまり、パーソナルコンピューティングの基本的なノウハウを身につけること、読み書きソロバンをパソコンを使って抵抗なく行えるようにすることが求められる。そのためにも一人一台は必須だ。世帯に一台、生徒数人で1台といった環境では意味がない。ないよりマシではダメなのだ。生徒自身が自分だけが使える自分専用のパソコンをあてがわなければならない。
兵庫県の取り組みは、そのための第一歩であり、とにかく最初の一歩を踏み出さなければ何もできない。兵庫県では足りない台数分はBYODを推進して間に合わせるようだが、何だっていい、ここはひとつ、少しでも早く全生徒に行き渡るように奔走してほしいものだ。
高校生がネットの世界で傷つかないために
こうして各自治体が少しずつ教育現場におけるパソコンの個人利用の推進を始めているが、懸念は他にもある。
たとえば自治体ごとの方針や予算の多寡によって学習機会の地域格差が生まれてしまうことだ。兵庫県でさえ、最初の配備は1学年1学級分に過ぎない。ここを一気にすすめないと、学校内でさえ格差が生まれてしまうことになる。そして、仮にハードウェアが揃ったとしても、それをケアする教員も養成しなければならない。兵庫県の場合はHYOGOスクールエバンジェリストと呼ばれる立場の教員を養成してICT活用を先導するほか、現場におけるデバイスの整備運用、また、使用ルールの策定などの業務を担う人材を配置するようだ。
高校生の学びという重要な基盤を理解し、ハードウェア、ソフトウェアに関わるテクノロジーを把握できて、さらには思春期の若者が、インターネットのように善悪が入り交じった世界で傷つくようなことがないように配慮しなければならない。しかもBYODにも対応する必要がある。そんなことができるスーパーな人材を確保するのは容易ではないが絶対に必要だ。本当は、大学などの教員養成学部のカリキュラムにだって整備する必要がある。将来の国力にも影響するであろう教育の現場整備だが、ここはひとつなんとか乗り越えてほしいと切に願う。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)