樋口泰行氏

日本マイクロソフトが、同社新年度に入ったのを機に、2015年経営方針記者会見を開催した。同社執行役社長、樋口泰行氏がこれまでの日本マイクロソフト、そしてこれからのマイクロソフトを説明した。

「まるで盆と暮れがいっしょにやってきたようなもので」

と樋口社長。この春はWindows XPのサポート期限切れと消費増税のタイミングが、PCの売れ行きにフォローの風を与えたという。また、その後も、想定内の範囲ではあるものの好調が続いていて、急激な落ち込みは観測できていないとのこと。日本は特にXP率が高い国だったが、にもかかわらず、移行がもっとも進んだリージョンでもあり、6月末時点で8%まできたことで、そのマイグレーションの支援を引き続きやっていきたいという。

「使ってもらってなんぼ」

とも樋口社長。これまでは、WindowsもOfficeも、意外にカンタンに売れるという傾向に甘んじてきた。だが、「景観の素晴らしいレストランだからといって客がくる時代ではない」とも。必ず努力をしなければならない。WindowsもOfficeも同じで、とにかく使ってもらうための努力を惜しまない。本当はそんなことは当たり前といえば当たり前で、本来は自然体でそういう意識が出てこなければならないとした。

「目には目をということですよ」

よそのOSが無料ならわれわれもそうしようということです。春に米本社のCEOがサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏に交替して決まったゼロ円Windows戦略だ。これには樋口社長自身も驚いたという。

「もうWindowsにこだわらない」

競合相手のフットプリントがこれだけ拡がっている中で、だったら他のプラットフォームでもOfficeも使ってもらおうじゃないかということで、各プラットフォームに向けてOfficeを提供した。本当なら対価をもらうのが当たり前なのに、それを無料にしてしまった。Windows Azureも、Microsoft Azureに改名した。クロスプラットフォーム戦略がきわめて重要で、こんなことは新CEOにしかできなかったことだろうと樋口社長。

「やっぱりWindowsでしょ」

Windowsにこだわらないといいつつも、日本社会への貢献について、特に教育分野に力を入れていることをアピールした。たとえタブレットであっても周辺機器、管理面、セキュリティは重要、そして過去のコンテンツも動かなければならないのなら、やっぱりWindowsです。先行的に導入してもらっている組織はみんなそういうと。たとえば、Googleのシンボリックなユーザーだった日本大学がOffice 365に移行したことを報告した。

「前任のゲイツやバルマーにとってはWindowsは自分の子どもみたいなもんですから」

WindowsやOfficeは前CEO、前々CEOにとってそうだったでしょうから、無料にするなんてディシジョンは絶対にできなかったでしょうね。まさにサティア・ナデラであればこそ、それだけのことをこの短時間に決定できたのだと思います。

「Firefoxに乗り換えたらもっとたいへん」

ブラウザの脆弱性といったところでは、Internet Explorerほどセキュリティにコミットしたものはありません。ですから、他のブラウザに乗り換えると、かえって脆弱になってしまいます。

「まだ言えませんが同じようなことを考えているお客さんが本当に増えている」

大塚製薬がMR向け新端末として、これまでのノートPC+タブレットの2台体制を一元化、デルのタブレットに置き換え、1,900台を一気に導入したことを受けた言葉。多面的に手間やコストを考えたら、Windows一本にしぼるのがもっとも賢明とのこと。

この日、最大のニュースは、日本市場に最適化した「Office 365」のコンシューマ向けサービスがついに開始されるというものだった。Officeプリインストール率が高い日本では、個人向けのサブスクリプションサービスとしてのOffice 365が提供されていなかったのだが、いよいよ、重い腰を上げることになる。ちなみに米国ではすでに個人向けのサービスが「Office 365 Home」として提供されているが、ライセンス的にはこれで提供されるOfficeはビジネスに使うことが許諾されていない。日本では、こうしたライセンスは受け入れられないだろうという判断がサービス提供をしてこなかった理由のひとつだ。

日本でも「Office 365」のコンシューマ向けサービスがはじまる

日本市場に最適化して提供開始ということで、すでに営業部隊が各PCベンダーに説明しはじめているという。サービス開始のXデイがいつになるのかは、まだわからないが、9月、10月に発売される各社の新製品には間に合うように作業を進めているとのことなので、詳細がわかるのにそれほど時間はかからないだろう。

新年度を迎えた樋口社長の抱負としては、

「日本社会にさらに根付いた会社になりたい」

新しい年度を迎えた日本マイクロソフトに期待したい。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)