Bluetooth SIGが、2020年の市場動向レポートを公開した。オーディオストリーミングは2024年までに40%増(2019年比)、データ転送関連デバイスは医療分野での技術革新によって2024年までに年間15億台の出荷予想、また、位置情報サービス関連では2024年までに年間5億3,800万台、約4倍(2019年比)となるほか、meshによるデバイスネットワークは認証件数が半年ごとに倍増しているという。
オーディオやエンタテインメント、自動車、スマホ、タブレット、パソコン、追跡タグなどのデバイスなどで、今よりもずっとBluetoothが身近なテクノロジーとして暮らしの中に溶け込んでいくと同SIGでは予想している。
健康とBluetoothの密な関係
その浸透の速度は、個人的にはもっともっと右肩上がりになるのではないかと思っている。というのも、ただでさえ話題になることが多い今後の健康問題が、新型コロナウイルス感染危機のおかげで、さらにクローズアップされているからだ。これからこの感染騒ぎが収まったとしても、大きな社会変容は避けられない。そんなときに、テクノロジーをどのように役立てることができるかは、メーカーにとっても消費者にとっても、そして、プラットフォーマーにとっても大事な問題だ。何しろ人類が生き残れるかどうかの瀬戸際だからだ。
新型コロナ感染問題の影響で、同SIGの予想がどのような影響を受けるのかは、今のところなんともいえない。なにしろ、AppleとGoogleが、ウイルス対策として濃厚接触の可能性を検出する技術で協力するという、平時では考えられないようなことまで表明されたのだ。
この協力体制のもと、まず、公衆衛生当局が提供するアプリを利用する Android及び iOS端末間で相互運用を実現するAPIが2020年5月にリリースされ、公式アプリとして登場する。
さらに、数カ月をかけてAppleとGoogleが、それぞれの基盤となるプラットフォーム、つまるところはiOSとAndroidに、この機能を組み込むことで、より広範なBluetooth ベースの濃厚接触の可能性を検出するプラットフォームの実現を目指すということだ。アプリを個々のユーザーがすべてインストールするというのは難しいので、OSにそれを埋め込んでしまうというのは重要だ。なにしろ、少しでも多くの人が、このプラットフォームの元に行動するようにしなければ効果が得られない。
プライバシー、透明性、そして同意が何よりも重要と両社では認識していると同時に、第三者による分析を可能にするために、この取り組みに関する情報は公開することを前提としているともいう。
正直な申告が鍵となる新システム
いわば見えないコロナウイルスを可視化して見えるウイルスにすることができれば、感染をかなりの確率で抑止することができる。だがそれは通常の方法では無理だ。いや、たとえば、ARゴーグルなどをつけてウイルスを見える化できるようになるのではないかといった妄想までしてしまう。一般的にウイルスのサイズは約0.1μメートルで、マスクの編み目の大きさよりもはるかに小さいが、水分やホコリに付着して飛ぶので、マスクによる抑止効果はある程度期待できる。それでも目に見えるほど大きなものではない。
AppleとGoogleのチャレンジは、これらのウイルスを目に見えるようにするというものではなく、最新の技術を駆使して“濃厚接触”を追跡し、リスクがあったときには通知できるリストを作ろうというものだ。空港や駅で移動してくる人々を、非接触で皮膚の体表温度を計測してスクリーニングするようなことで、感染の疑いがある人をあぶり出すのではなく、あくまでも一人一人の人が、正直に自己申告で自分が感染していることを表明する必要がある。つまり、誰もが正直であることが大前提だ。実に人間らしい。それを誰に強制されるわけでもない以上は、とにかく人を信じることからスタートさせなければテクノロジーがどれだけ優れたものであったとしても無力だ。
コロナのおかげでテクノロジーも試され、人の意識も試される。コロナ詐欺も多発しているとかで、詐欺師の側も勉強に余念がない……。本当にやっかいな時代になったものだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)