ソフトバンク、ドコモ、auの順に、各社の5Gサービスの詳細が発表された。新型コロナ感染防止対策として、オンラインイベントが開催され、一般に向けてもプレゼンテーションが配信された。各社本当なら大々的なイベントを開催して発表したかったに違いなく、スタートがこのような形になったのは残念だが、それはそれで5G時代の「オンライン」という象徴的な概念が強調できたのは、逆にいうといい機会だったのかもしれない。
ちなみに、配信された映像については、3社ともひどかった。これで5Gの時代には……という高速大容量をアピールするにはあまりもなさけない映像品質だった。4Kとはいわないものの、せめて、地デジの映像に匹敵するくらい精細感ある配信をしてほしかった。
「実質据え置き」で始まる5G
さて、サービスインは、ドコモが3月25日、auが3月26日、ソフトバンクが3月27日だ。各社ともに5Gサービスの付加価値料金としては一定額(500~1000円程度)を設定しているが、キャンペーンなどで一定期間はその分を割り引くため、実質的には5Gになっても料金は変わらず、さらにデータ量無制限などの付加価値が得られる。
割引期間はauとソフトバンクが2年間、ドコモが6カ月間だ。実に4倍の開きがある。5Gのサービスエリアは当初から注目されていたように、サービス開始時はきわめて狭い。エリアというよりもスポットが散在する程度といってもいい。ゼロとはいわないがないのも同然だ。
せっかく5Gスマホを手に入れたとしても、それが5Gネットワークにつながっている時間は、いったいどのくらいになるのだろう。おそらくほとんどの時間は従来のLTEネットワークに接続されたままなのではないか。日本全国のユーザーの誰もが気軽に5Gネットワークを利用できるまでには、まだそれなりの時間が必要だ。各社の5G料金割引期間は、それまでに要する時間の目安になると考えてもいいかもしれない。
そういう意味では半年間を設定したドコモにもっともやる気を感じる。ただ、キャンペーンなので、延長の可能性もあることを考えれば五十歩百歩といったところか……。
エリアは? SIMは? 5G契約のギモン
毎月の支払い額が変わらないのなら、契約後の付加価値のみを享受するために、契約プランだけを5Gに移行しておきたい。基本的に端末とサービスは別というのが建前なので、当然、それはできるはず。各社ともに端末は最初のラインアップが発表されたものの、実際に自分の端末を機種変更するのは本格的なエリア展開後でいいと考えるユーザーも少なくないはずだ。
各社ともにおそるおそるデータ量無制限を打ち出したのは評価したいが、5G対応プランに加入するには各社ともに端末を購入しなければならないという。そもそも5Gサービス用のSIMは従来のLTE端末で使えるかどうかは保証されないというハードルがある。
たとえば、ドコモは端末持ち込みも可能だが、5Gサービスの料金プラン全般について「ご注意事項」を公開している。
それを読むと、申込時に対応機種を利用中であることを確認できた場合に申し込み可能とされている。また、ドコモオンラインショップでの「5Gスマートフォンご購入時の注意事項」のうち「利用時の注意事項」として「5G契約のドコモUIMカードとドコモから発売されたXi端末の組み合わせでは、通話・通信などがご利用できない場合があります。また、通話・通信以外の一部機能もご利用できない場合があります」とも記載されている。
UIMカードというのはいわゆるSIMのことだ。契約者情報を記録した小さなICカードで、端末ハードウェアに装着することでサービスが利用できるようになる。複数台の端末を持っていても、SIMを差し替えるだけで自分の電話番号が使える。
だが、既存4G端末で5G対応のSIMが使えない可能性があるとすると、仮に、5G端末を購入したとしてもプランの変更はためらわれる。ちなみにドコモの注意事項の中には「詳しくはドコモのホームページでご確認ください」とあるが、5G用SIMが使えない4G端末についての情報は、3月24日時点では公開されていない。
またauのサイトを見ると5Gプランの対象機種は「5G対応スマートフォン」と記載されているだけで、それが持ち込み端末でもいいのか、4G端末ではだめなのかといった詳細はいっさい不明だ。
auに問い合わせたところ、システム的には既存端末のままでもプラン変更はできてしまうとのことだ。auの5Gプランと4Gプランを比較した場合、5Gで使い放題プランが新設されたドコモほどの付加価値があるわけではないが、これがきっかけでまたサービスと端末が密接に結びつくようなことにならなければいいと思う。
日常で使える手頃な5Gスマホが欲しい
消費者としては、身の回りにほとんど使える場所がないのに新しい端末を購入するのは気が進まない。でも、5G対応プランの各種メリットは、ちゃかりと享受したいと考えるのが当たり前の発想だ。自分の生活圏内に5Gが整備された時点で、また、ミリ波対応の端末が出揃うタイミングを待ち、そのときになってはじめて、もっともリーズナブルな最新の端末を購入したいと考えるのが当たり前ではないだろうか。
5Gは始まったばかりのサービスであり、これから何が起こるかわからない以上、各社が及び腰になっているというのは心情としては理解できる。だが、もう少し消費者の気持ちに寄り添った展開があってもいいはずだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)