首相がスポーツ・文化イベントの開催を2週間自粛するよう要請したことを受け、各方面での対応が進んでいる。その一方で、急な「首相の要請」ということからか、対応が中途半端になっている現象も見かける。
イベントは自粛、国の対応もさまざま
たとえば東京マラソンは一般参加者枠が取りやめになり、観戦自粛も求められていたわけだが、それでも沿道には多くのファンが駆けつけて声援を送った。「感染リスクの回避のため、沿道応援については控えていただくようお願い申し上げます。テレビ・ラジオを通じた選手の応援にご協力をお願い致します」という呼びかけにもかかわらずだ。
また、国交省は「新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、自動車検査証の有効期間が令和2年2月28日から3月31日までの自動車について、全国一律に令和2年4月30日まで自動車検査証の有効期間を伸長します」とし、不特定多数の申請者が、年度末に全国の運輸支局の窓口に集中することによる、感染拡大のリスク回避に向けて動いた。
その一方で、今は確定申告、青色申告などの真っ最中の時期だが、国税庁は政府の方針を踏まえ「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の延長」を決定、4月16日まで1カ月延長することにした。
マスク入手は実に困難、会合の実施は延期したい
全国の税務署では納税者が円滑にかつ正確に申告書を作成できるように確定申告相談会場を開設、申告相談に応じている。そこに不特定多数の人が集まることを回避して感染拡大を防止しようというわけだ。この申告相談は申告期間中、一部の税務署において、2月24日と3月2日に限り、日曜日も相談・申告書の受付をすることになっていた。そしてその日曜相談は予定通り行われたようだ。
近隣の税務署に様子を見に行ってみると、外に人が行列を作るような大きな混雑はなかったようだが、予定通りの相談会が実施されていた。申告会場にはアルコール消毒液も設置されていた。国税庁では「昨今の状況により(アルコール消毒液を)補充できない場合がございますので、あらかじめご了承ください」といった注意も出し、会場へのマスクの持参(着用)などを要請しているが、マスクの入手難の前には無力だ。
ちなみに確定申告はスマホやPCなどを使いインターネット経由で申告するe-Taxという方法が用意され、国税庁もそれを勧めている。ただ、それがやりたくてもできない層は少なからずいる。できることを知らない層さえいる。いわゆるデジタルデバイドと呼ばれる比較的高年齢層の人たちだ。結果として、申告書の作成の手伝いをしてもらおうと、行列を作る。相談に訪れる人々はそれなりに年齢層が高く、もし感染したら重篤になることも懸念される。期間を延長したのであれば、延長された期間の対処などもあわせて公表し、日曜日の開催は中止してもよかったかもしれない。
ウイルスに悩まされる現実の世界
案内に立っているマスク着用の税務署員にきいてみると、2回の日曜日相談は予定通りで、中止等については個々の税務署では決められないという。また、一か月延長された期間にあらためて日曜日相談を実施するかどうかは何も決まっていないと、なかば困惑気味に説明してくれた。要するに、国税庁本体からのお達しがなければ、税務署側では何もできないらしい。
省庁ごとに緊急時の対処のスピードが違う。ウイルスに悩まされるのはITの業界だけだと高をくくっていたが、今回はヒトに感染する本物のウイルスだ。PCと同じようにウイルス対策を万全にしておかなければたいへんなことになる。各省庁は率先して感染拡大を未然に防ぐ行動を規範として見せてほしい。
ウイルスに感染して苦しむのは自分だけではない。他人に伝染させて、他人に迷惑をかけてしまうのはPCのウイルスと同様だ。そしてITと無縁の多くの存在についても思い知らされる。デマに振り回され、トイレットペーパーどころか、一部の食料品までもが店頭からなくなる現象を起こしたりもしている。
この大騒動の今、本当に、令和の時代なのかと思ってしまう。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)