2014年6月16日、日本マイクロソフトが都内のホテルでパートナーを対象とする「Microsoft IoT Summit 2014」を開催した。それに先立ち、同社はプレスブリーフィングを開催、同社のIoTへの取り組みについて説明した。
今、Microsoftは、IoTの前にIoYTをアピールする。これは、Internet of Your Thingsの頭文字をとったものだ。既存のデータカルチャーの中で、IoTのトレンドに関してはいろんなメッセージが交錯しているのが現状だが、新しい技術が出てきて、それが普及するときには必ず起こる混乱でもあると同社では考えている。
そこで、既存のIT資産で、とにかくIoTを始めてしまうことを同社では提案する。それがYour Thingsの意味するところだ。つまり、何百億という数字を前提にはじめるのではなく、小さなことからやっていこうというわけだ。そのために、必要なのが、既存のデバイスをクラウドにつなぐことだ。
世の中には、古いものから新しいものまで、さまざまなデバイスがあらゆるところに散在しているが、それらをとにかく安定して当たり前のように動いているクラウドにつなごうというわけだ。そして、つないだら、そのデータを統合する。そして、そこから何らかの価値を創出するための新しい洞察を生成しようというのだ。
このブリーフィングでは、いくつかのソリューションが事例として紹介された。たとえば、SBクリエイティブ社のソリューションでは、書店に設置するサイネージ用什器が披露された。約20型スクリーン×1、約10型×2、4.3型スクリーン×20という多スクリーンのシステム什器で、リアルな書籍の陳列棚としても機能する。そして、アプリをインストールした端末を持ったユーザが、この端末に近づくとBluetoothを使った通知が行われ、電子書籍の購入を促されるという。
このソリューションでは、リアルな書店で電子書籍を購入できる仕組みが提供されているが、それによって、書店がきちんと利益を得ることができるように考えられているようだ。つまり、電子書籍をリアル書店で購入しても、その場所が特定されることで、書店の利益が保障される。将来的にはNFCのような仕組みも取り入れ、ユーザーが店頭でリアルな書籍に興味を持って、そこでスマホをタッチすれば、その書籍の電子版が購入できるようなものにする計画もあるという。
ちなみに、この什器、現時点ではベンツが普通に変えるくらいのコストになるという。まずは、数台からのスタートで、出版社が書店に対して販促用の宣材として提供する予定になっているそうだ。
たくさんのスクリーンに映し出されるコンテンツは、Microsoft Azureから制御され、什器が内蔵する機器には、さほど高い処理能力は求められない。5年程度は使われる可能性のある什器だけに、単独で処理ができるようにしては5年間の早い時期に陳腐化してしまうかもしれないからだ。20個の型スクリーンについても、簡単にタッチ対応のものに交換が可能なようにも工夫されている。
IoTというと、いわゆるウェアラブルに代表される小さなデバイスからのスタートが思い浮かぶが、いきなり、その世界に入っていこうとして途方に暮れるのではなく、すでに街で見かけるお馴染みのデジタルサイネージをクラウドに接続することで、実現される世界観を体験することが重要だ。そして、そこで行われる人間と機械のインタラクションの結果。それらをビッグデータとして得ることから始めれば、次の数百億台へのステップにつながっていくということだ。それをIoTと呼ぶことには異論もあるかもしれないが、とにかく今あるものをクラウドにつなぐことからはじめようというビジョンは組み込み機器にも相当の実績があるMicrosoftだけに説得力をもつのではないか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)