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東京の駅のアクセシビリティは低い

2020年が始まった。

今年は五輪がやってくることもあり、さまざまな公共スペースで大改造が行われている。仕事柄あちこちの国を訪問しているが、アクセシビリティという点ではワーストに近いと感じるのが日本の駅なので、とにかくなんとかしないと訪日する人々に恥ずかしい。ただ、東京でいえば、渋谷を見ても新宿を見ても、工事は急ピッチで進んでいるようだが、再開発は五輪に本当に間に合うのかどうか。

何よりも、ほぼ半年先の詳細がまだ決まっていないというのに苛立ちを感じる。施設はともかくオペレーションに不安を感じる。東京という都市に不案内な人々を、本当にきちんとナビゲーションできるのだろうか。

たとえば公共交通機関を利用したり、コンビニなどでの決済ということに関して、インバウンドにはSuicaやPASMOを買ってもらって、それを使わせればOKとか、QRコード決済ならカンタンなどというのはたやすいが、その導入に、彼らがどれほどのエネルギーを要することか。たった数週間のことなのだから、ここはひとつITに大きな期待をせず、インバウンドは五輪期間中、観戦チケットで公共交通機関に乗れるくらいの大盤振る舞いをしてもいいんじゃないだろうか。

五輪を支えるITが次の10年をリードする

ともあれ五輪はITのショーケースだ。日本が世界のITを牽引しているというと語弊はあるが、この世界的なイベントを支えるITインフラは、間違いなく、2020年代の10年間をリードする壮大なデモンストレーションだ。

AIと5G通信は、そのデモンストレーションを支える重要なテクノロジーだが、なんとなく半信半疑で見つめられている。

AIは言ったもの勝ちというか、数十年前のコンピュータ占い的なうさんくささが常につきまとうし、5Gの通信基盤が現実的なかたちで手に入るのもずいぶん先の話でオリンピックには間に合わない。仮に、五輪会場で5Gインフラが完全に機能し、クラウドにある優れたAIサービスをフル活用できたとしても、それを活用できる端末を手にして享受できるエンドユーザーがこの夏の時点で何%いるというのか。

スタジアムなどの競技会場のこけら落としが始まっているが、夏の暑さ対策を考えすぎて、冬の競技観戦が寒すぎてつらいという話などもきこえてくる。SNSなどではシャワートイレではないとか、動線の見積もりが甘すぎる、座席のピッチが狭すぎるといった声がトレンドになったりしているようだ。「世界最高のユニバーサルデザイン」と言われてる国立競技場だが、果たして本当はどうなのか。数週間の五輪のためだけにうまく機能するように考えるのではなく、この先の数十年を見据えて、日本のスポーツ文化を支えるスタジアムであることを見据えているのか、その真価が問われるところだ。

五輪を言い訳にやれることをやろう

いずれにしてもこの夏の五輪は、いろいろな未来への言い訳となる。五輪がなければできないことが、その開催を言い訳にたくさんできる。だからこそ、数週間の五輪でのデモンストレーションだけをゴールにするのではなく、これからの未来のための、日本人の未来を豊かにするきっかけにしてほしい。今からそんなことを言っても遅すぎる感はあるが、できることはまだあるはずだ。訪れるわずかなインバウンドをおもてなしできないようなインフラでは、この先の日本の未来を支えることはできるはずがない。

そんなことをつらつらと考えているうちに、正月が終わり、日常が戻ってきた。米・ラスベガスで開催される恒例のCESイベントも始まった。20年近く、皆勤だったこのイベントだが、今年は東京でお留守番だ。米国視点で数年先のITトレンドを占うこのイベント、各社の報道を楽しみに待ちながら、この夏の大騒ぎを想像することにしよう。

どうか、今年も引き続き、よろしくお願いします。パワフルでダイナミックな年になりますように。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)