ソースネクストが通訳機のベストセラーであるポケトークシリーズの新機種として「ポケトーク S」を発表した。2017年の初代、2018年のポケトークWに続く3代目となる。
新モデルはかゆいところに手が届く
同シリーズはすでに累計出荷台数50万台を突破し、国内販売台数シェアで94.9%と、競合ベンダーを寄せ付けない強さを持つ。今回の新シリーズでは、既存ユーザーの要望を取り入れ、細かい部分がずいぶんよくなっている。初代はたった2年前の登場なのに、ずいぶん古さを感じてしまう。
今回は、ハードウェア、ソフトウェア双方の抜本的な改良が目立つ。サイズは名刺サイズになり、厚みは11.5ミリと、2代目の3分の2になった。重量も75グラムで4分の3だ。それでいて画面サイズは大きくなって、2.4型液晶は2.8型になって解像度も上がった。さらには、翻訳ボタンを押してからの応答時間は3分の1以下になるなど使い勝手は大幅に高まっている。
また、カメラ翻訳機能がついたことも利用シーンを拡げる。こちらは55言語を画像翻訳できるというもので、800万画素のカメラでとらえた看板や飲食店のメニューなどを文字翻訳してくれる。
さらに、おもしろいのは会話レッスン機能だ。既存ユーザーの多くが、海外旅行のほかに、語学学習に使っていることを受けての機能追加で、旅行に役立つ6シーンに対応して、典型的な会話のやりとりをレッスンすることができる。会話の流れは典型的なものだが、想定外の応答をしても、ごめんなさい、もう一度言ってください的な答えでうまくかわし、想定ストーリーに戻そうとする。
また、現在地から通貨を判別してその日のレートで計算する通貨換算や、長さ、重さ、温度などの単位換算などの機能も追加された。
逆翻訳はやや面倒、言語の自動判別機能が欲しい
ポケトークは、世界中で公衆通信を利用できる使い勝手のよさも魅力だ。ルータやスマホのテザリング、Wi-Fiを使うこともできるが、接続のことを何も考えなくていいのがうれしい。気になる価格はグローバル通信2年つきが税別29,800円となっている。
ひとつ不満があるとすれば、日本語と指定した外国語を行き来する際に、翻訳の方向をいちいち指定しなければならない点だ。日本語を外国語に翻訳させるには、ボタンを押して話し、話し終わったらボタンを離すことで指定した外国語が発声される。次は、向こうが応答する番だが、そのときに、翻訳の方向を変えるために画面をタップして指示する必要があるのだ。これが意外ににめんどうくさい。
競合機のFCCL arrows helloは、翻訳ボタンを2つ装備し、押したボタンに応じて翻訳の方向が決まる。また、同機は一部の言語だけだが、オフライン翻訳に対応しているのもいい。このあたり、最初に翻訳する2つの言語を指定しておくのだから、発声された言語がどちらなのかが、自動判別できるようになっていたらいいと思った。
スタンドアローンで何ができるか
スマートスピーカーがそうであるように、この手のデバイスは、基本的にクラウドサービスとの連携で成り立っている。そのため、ハードウェアがバージョンアップされたことで、ノイズキャンセルの性能があがるなど、音声の拾いがよくなって騒音環境での使い勝手が上がるといったことはあるかもしれないが、翻訳の精度があがったりということはありえない。だからこそ、スタンドアローンでの付加価値がポイントとなる。
実際、今回のポケトーク Sは、軽量化、薄型化などを果たしているが、バッテリの容量は旧機種に比べると半分くらいになっている。そして、それに伴って連続待ち受け時間や連続翻訳時間も半分程度となっている。具体的には1週間程度の旅行なら充電の必要がない旧機種に対して2泊3日といったところだろうか。連続翻訳時間となるともっと短くなってしまう。
このバッテリの持ちでは業務用に丸一日頻繁に使うなどの場合を考えると、ちょっと不便を感じるかもしれない。そのためかどうか、旧機種のポケトーク Wは、そのまま併売されるという。それでも翻訳精度は変わらない。旧機種になってもクラウドサービス依存だから、翻訳性能は変わらないわけだ。
汎用機としてのスマホがあれば、たいていのことはできてしまう世の中だが、専用機が求められる現場もまだたくさんある。翻訳専用機としてのポケトークが、どの方向に進んでいくのか、まだ伸び代が感じられるデバイスだけに興味深い。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)