Arubaが、スモールビジネス向けネットワーク製品ブランドを発表、小規模オフィスやカフェ、店舗などの様々なニーズに応えるべく設計された、Aruba Instant Onシリーズの日本展開をスタートした。すでに、6月に米国で出荷が開始されているが、この秋に日本で発売を開始する。
実は、これまでのArubaはエンタープライズだけを見据えたビジネス展開をしてきたが、今回の発表で、よりSMBマーケットに近いビジネスに参入したいという(SMB:Small and Medium-sized Business、中堅中小企業)。その理由は、そこにはかつてないほど大きなチャンスがあるからだと同社は考える。
決済もデータ通信もまかなう小規模Wi-Fi
その第一弾として、まずは、Wi-FiアクセスポイントでSMBにエンタープライズグレードのWi-Fiソリューションを提供する。
ホテルや個人経営のカフェなどで、どうにもWi-Fiが不安定で、仕方がなくスマートフォンのテザリングを使わざるを得なかったことはないだろうか。つながっているのにうまくデータが流れないということもある。最悪のパターンだ。お願いだからルータを一度リセットしてほしいというような状態で、本当に役にたたない場合がある。インターネット接続に不具合があるパソコンは、ただの箱に成り下がる。コンシューマー向けのWi-Fiルータを使っている店舗ではこうした目に遭遇することがよくある。
こんなことが、大企業のオフィスで起こったらたいへんだ。ビジネスは止められないのだから、インターネットも止められないのだ。だから、通信を重要だと考える企業は、SOHOであろうが大企業であろうが、多少コストがかさんでも、きちんと管理ができるエンタープライズ向けの製品を選ぶ。Arubaは、そんな顧客が信頼するベンダーのひとつでもある。
さらに、同社の日本における今回の展開は、キャッシュレス決済のトレンドを見据えたものでもある。というのも、キャッシュレス決済という重要な役割を担いつつ、ゲストのインターネット接続もまかなうといった小規模店舗が少なくないからだ。また、SOHOでも、安定したオフィス内ローミングなどのニーズがあるという。さらに今後は在宅勤務なども増えてくる。そのとき、今までのコンシューマーベースで使われてきた暗号化技術としてのWPA2パーソナルではなく、WPA2エンタープライズが求められるようになるといった提案もある。特に、量子化コンピューティングが騒がれる昨今、暗号が解かれる時間も短縮される兆しがあるという話題も考えなくてはならないと同社はいう。
ネットもインフラ、堅牢と安全が必要
セキュアで信頼性が高いネットワークでありながら、シンプルであることを同社では目指している。大企業にはITの管理者がいて、その管理者は管理することが仕事だ。だが、SOHO、また小規模店舗では専任の人材を置くことは難しい。だからこそ、極端な話、管理をしなくても、問題を起こすことなく稼働を続けてほしい。つながって当たり前のものなのだ。
同社では、今後、Wi-Fiルータのみならず、イーサネットケーブルを介して電力を供給するPoE(LANケーブルで通信と電力を提供するイーサネットの規格)のアダプタなど、これまでは大企業でしか用いられてこなかったテクノロジーをシンプルに提供するためのデバイス等を拡充していく予定だという。
電気やガス、水道などのインフラは、災害でも起こらない限り、目の前にあるコンセントにケーブルを接続すればエネルギーを得ることができる。インターネットも同様のインフラになってきたし、Wi-Fiも、電波が飛んでいるなら当然つながると考えるのがエンドユーザーだ。だからこそ、そこに堅牢でセキュアな安定した接続性が求められる。
もっとも、今回の新製品がインターネットへ接続するには、別途、機材が必要だ。たとえば、NTTのフレッツシリーズなどで光回線を引き込んでいる場合、それをイーサネットに変換するONU(光回線終端装置。光信号とLANを変換/接続する)、また、そのケーブルを介してプロバイダーに接続するためのPPPoEやIPoEを担う機器がいる。多くの場合は事業者からの貸し出し機材を使うことになるが、これらを含めたトータルな環境を提供できなければ、エンタープライズクオリティとはいうことができそうにない。Arubaでは、今後、こうした面もサポートした製品群を考えているという。
いつでもどこでも安心して使えるWi-Fi環境。オリンピック開催がややこしい話になってきているが、Wi-Fiや5Gは、その不安定な国際行事とは関係なく、頼れるインフラとして整備していってほしいものだ。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)