パソコン各社の夏の新製品発表が一通り完了した。この夏は、VAIOと富士通クライアントコンピューティング(FCCL)に注目しておきたい。
使わせようと誘惑してくるVAIO
まず、VAIOはなんといっても製品愛に満ちている。コモディティ化し、どのパソコンも使われるパーツや構成は似たようなものとなるなかで、創意と工夫に加え、外観についても企画開発側の思いいれを強く感じる。
特に、台数限定のVAIO SX12勝色特別仕様のモデルは、同社の5周年を記念して企画されたもので、日本の職人技を駆使して途方もない手間とこだわりをもって実現したという。VAIOのコーポレートカラーは深く濃い藍色だが、この色は、古くから「かちいろ」と呼ばれてきた。藍を濃くしみこませるために布を叩くことが由来とされ、縁起色、すなわち勝色として武具に使われた特別な色だ。VAIOはそれを記念モデルの仕様として提案したわけだ。
外観だけではなく、クラムシェルモバイルノートとしての完成度も高い。12.5型ワイドスクリーンを従来の11型フットプリントに抑えて広い画面を確保、そして、897g以下の軽量ボディを実演している。
圧巻は周辺機器接続のためのポートで、ボディの薄さを創意と工夫で克服し、有線LANからVGA、HDMIなどあらゆるポートを装備している。VAIO定番のVAIO TruePerformance(高負荷時に高いCPU動作クロックを維持する技術)も健在だ。第8世代の中でも最新のインテルCoreプロセッサの性能を最大限に引き出すことができる。
欲しいと思わせ、持っていたいと感じさせ、使わせようと誘惑するノートパソコンは近頃では珍しい。愛でたくなるような、そして、まるで質感のいいスマートフォンのような外観はまさにそそられるといってもいい。
軽さ競争に先鞭をつけたFCCL
一方、FCCLは、LIFEBOOKの新型として、タッチとペンに対応した13.3型スクリーンの2in1コンバーチブル機で世界最軽量の868gを実現したLIFEBOOK UH95/D2をお披露目した。
発表会後の取材に対応した富士通クライアントコンピューティング代表取締役社長の齋藤邦彰氏は、LIFEBOOKは世界最軽量の追求をあきらめないし、それがなければ意味がないと断言する。
クラムシェル世界最軽量の698gを実現しているLIFEBOOK UH-Xに対して、2in1コンバーチブルの付加価値分を170gの増加で抑えているのは立派だ。LTE対応機がないこと、モダンスタンバイ非対応という点は残念だが、今後は、このあたりの重量が激戦区になりそうだ。その先鞭をつけたモデルとして注目しておきたい。
最初に書いたように、パソコンは、コモディティとしての標準パーツの組み合わせでできている。各社が勝負できる面は限られているというのが実状だ。それは外観であったり、機構の設計であったりする。スマートフォンはパソコン以上にその面が熾烈だ。なんといっても薄くて平たい狭額縁のスクリーンという代わり映えのしないステージに特徴を持たせ所有感を高める必要がある。ここはおおいに見習うべきだ。
パソコンはコモディティ化の道をいったんはキャンセルし、高付加価値商品としての道をもう一度考えるときにきているのではないか。わかっているメーカーは、そこをうまくコントロールできている。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)