あらゆるガジェットからバレルプラグ、いわゆる直流用の長細いプラグを追放する野望を持つサイプレス社。先週、台湾で開催されたCOMPUTEX台北の期間中に、同社は電源アダプタOEM企業向けにUSB-C充電器向けの完全統合型ソリューションを発表した。
USBテクノロジーおよびUSB-Cコントローラーにおいて業界トップのサプライヤーとして知られる同社だが、今回のソリューションは2019年第4四半期の量産開始が予定されているという。会場近隣のホテルのプライベートブースではその実機を見ることができるというので、のぞいてきた。
信頼性の高いUSB Type-C電源アダプタキット
今回、発表されたのはEZ-PD Power Adapter Generation 1(PAG1)ソリューションと呼ばれるものだ。
PAG1は、USB Power Delivery (PD)対応コントローラーが統合されたAC-DC電源ソリューションで、拡大するUSB-C充電器市場において電源アダプタOEM企業が信頼性や効率性、コスト効果に優れた電源アダプタを開発できるよう支援する。いってみれば、PD対応したUSB-C充電器の半完成品キットともいえるもので、各ベンダーは、このキットを入手し、思い思いのパッケージングをすれば、そのまま自社製品として信頼性の高いPD充電器を出荷することができる。
最近は、2つのType-Cポートを持つPDアダプタをよく見かけるようになった。PAG1も、プライマリとセカンダリの2つの充電ポートとPDコントローラを2チップでサポートする。2つの充電口同士は、プラグの抜き差しごとにネゴシエーションをしなおして、仕様上の電力を再分配する仕組みになっている。
iPhoneの急速充電にも一役買う
アップルによってMFi認証されたUSB Type-C to LightningケーブルがAnker、cheero、ベルキンといった著名各社から、続々と登場しているが、これらのケーブルを使えばPD充電器とiPhoneを接続して急速充電ができる。
急速充電に対応しているのはiPhone 8以降の製品となるが、iPhoneシリーズの純正アダプタが5ワット程度なのに対して、PD充電器ははるかに多い電力を供給する(Apple純正アクセサリでも18Wや30WなどのUSB-Cアダプタが出ている)。Androidスマートフォンも、Type-Cプラグを装備してPD対応するようになった。出先でバッテリが心細いときに、短時間で多くの容量を確保できるのはうれしい。
その急速充電のためには、対応ケーブルとPD対応のアダプタの両方が必要になる。このうち、PD対応アダプタに関して、OEM各社がリーズナブルな価格で多彩な製品を出せるように支援するのが、今回のサイプレスのソリューションだ。
小型化が進むUSB充電器、鍵は窒化ガリウム
COMPUTEX台北の展示会場も、2018年に比べると、一気にType-C PDアダプタの展示が目立つようになっていた。特に今年(2019年)は、窒化ガリウムという半導体を使い、小型化を実現したアダプタを数多く見かけた。
スマホのバッテリは大容量化が進んでいるし、普通の使い方なら丸一日の使用に不安はなくなりつつあるが、ポケモンGOでも熱心にやろうものなら焼け石に水で、午前中には残り容量が気になってしまう。そんなときに、サッと急速充電できることはやはり便利なのだ。
この先の将来、スマホのようなデバイスは、常に充電器に接続しておくという使い方ではなくなるだろう。だからこそ、急速充電のテクノロジーは重要だといえる。こと電気や熱がからむソリューションで、粗悪なものは火災等に直結するものだけに、信頼性の高い製品を使いたいと思うが、それを選ぶための確かな目を持とうにも、なかなか外観やスペックからだけでは判断が難しい。
インテルインサイド(intel inside)ロゴのシールが貼り付けらてたパソコンなら安心といったようなイメージで、こうしたソリューションが広がっていって欲しいと思う。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)