米・ラスベガスで開催されていたコンシューマーエレクトロニクスの展示会、CESが閉幕した。このイベントでは、コンシューマーデバイスが注目されがちで、クラウドサービスや、それを支えるインフラとしてのネットワークは裏方的存在だ。
ただ、この2019年は、次世代モバイルネットワークとしての5G元年ということもあり、関連企業が5Gネットワークへの意気込みを披露するという一面もあった。もっとも、2月末にはスペインのバルセロナでモバイルネットワークのイベントMWCが開催されるため、本編はそちらでということもあり、まさに、チラ見せの予告編だ。
そんな中で、CESの初日基調講演には米・Verizon CommunicationsのHans Vestberg CEOが登壇し、これからの社会を支えるインフラとしての5Gネットワークが、コンシューマーにどんな恩恵をもたらすかを説いた。
米国で5Gの家庭向け通信サービス開始
Verizonコミュニケーションズは米最大手の通信事業者で、日本でいえばNTTのような存在だ。NTTがドコモを持つように、VerizonはVerizonワイヤレスを傘下に持ち、最大の移動体通信事業者としても知られているが、近年は2位のAT&Tモビリティと拮抗し、双方が1億5千万人程度の加入者数で競っている。
そして、Verizonは、昨2018年10月に、サクラメント、ロサンゼルス、ヒューストン、インディアナポリスといった米国内の一部地域で5Gサービスを開始、世界で最初の5Gサービス提供事業者となった。もっともこのサービスは移動体端末を対象にしたものではなく、家庭向けブロードバンドサービスであり、いわゆる光回線やケーブルテレビネットワークを代替するものとして提供されている。
日本がそうであるように、米国内の多くのエンドユーザーはケーブルテレビネットワークに加入して家庭でのインターネットを楽しんでいるが、それをワイヤレスに置き換えるというのがVerizonのもくろみだ。CESの基調講演でも、世界で最初に5Gを使うことになったエンドユーザーが5Gネットワークを使ったライブ映像で登場、スピードテストをしてその値が披露されていた。ちなみにそのときの速度は600Mbps程度で、日本でいえば、家庭向けの光回線程度の帯域幅が確保されていることがわかる。
5Gの恩恵はまだ未知数
こうして着々とすすむ5Gネットワークの整備だが、それがいったい何なのか、そして、エンドユーザーに対してどんな恩恵をもたらすのかは、誰もまだ明確に示すことができていない。それはVerizonのみならず、日本のドコモやKDDIなども同様だ。
Qualcommに言わせれば、電気が発明されて各家庭に電気が引き込まれたときに、それがどのようにして暮らしを豊かにするかはわかっていなかったとのこと。とにかく電気が必要だということで始まり、インフラが整備されていったそのあとで、さまざまな電気製品が普及し、浸透していった。
そして、今や、電気は人々の暮らしに欠かせないインフラとなっている。5Gネットワークも、まずは、そこから始まるというのがQualcommの姿勢だ。Qualcommは、モバイル端末で使われているSnapdragonチップセットで知られる通信技術の雄だが、まさに開き直りで、とにかく5Gを始めれば、それが何かはあとでわかるというスタンスだ。
2020年にやってくる5G、新しいインフラになりうるか?
VerizonのVestberg氏は5Gネットワークを第4次産業革命のための欠かせないインフラとして訴求しようともしている。だが、その革命はどのようにして起こるのか、また、それが既存のLTEネットワークではかなわないものなのかに対しても、明確な指針を示せていない。
そんななかで、5Gネットワークの準備は着々と進み、新たなユーティリティインフラとして、われわれの暮らしを支えるべく浸透していくことになる。日本でもラグビーのワールドカップを控え、今年にもプレサービスが開始され、商用サービスは2020年の東京オリンピックに間に合わされる予定だ。
とにかく使ってみないとわからないが、何やらスゴイことができるらしい。今の時点では、そう思って環境整備を見守ることしかできない。電気が人々の暮らしに浸透するには50年以上の歳月が必要だったが、5Gの浸透には5年はかからないだろう。そのくらい速いということか……。