2019年。例年通り、年初のCESが始まる。米・ラスベガスで開催されるコンシューマーエレクトロニクス関連のイベントだ。すでに、怒濤のように各社の新製品が発表されているが、それはこのイベントに合わせてのもので、開幕2日前からプレス向けのプレイベントラッシュが始まっている。
一周回ってアナログな最新血圧計付き腕時計
そんなプレイベントのひとつがCES Unveiledだ。もともとは数日後に開幕するCESのエッセンスをチラ見せするプライベートの展示会だったが、ここ数年は趣が変わってきていて、CESで発生する大量の情報に埋もれてしまいがちなスタートアップ系のベンダーや、大規模ベンダーでもカテゴリ新参入のところが製品を並べるのが目につくようになった。
こういうところに日本のベンダーが見つかると、ちょっとのぞいてみたくなるわけだが、案の定、オムロンとFUNAIが目についた。ホーム向けのセキュリティや家電コントロール系のIoTなどの展示が目につくなかで、正真正銘のコンシューマー向け製品だ。
オムロンが披露していたのは血圧計測機能を持つ腕時計だ。今どきのものなので、なんらかのセンサーが常時手首を監視していて、特定のアルゴリズムで血圧を算出して記録するのかと思ったのだが、話をきくと、腕時計のベルトが血圧計のカフになっている。つまり、上腕に巻いて血圧を測定する機構がベルトそのものに組み込まれているのだ。手首式の血圧計は以前からあったが、大きく重かった。だが、この製品は普通の腕時計そのものだ。
血圧はカフを巻いた部分を心臓の高さにして計測する必要があるが、この血圧計も同様だ。ちょうど心臓の前に手をやって敬意を表するようなジェスチャーで計測する。当然、指定した時刻に自動的に測定するのではなく、腕時計の操作でマニュアル測定する。結果は腕時計が記録するとともに、スマートフォンにも送られ、アプリでさまざまな分析ができるようになっている。
見せられたアプリの画面に表示されていたのは、説明してくれた係員のリアルな血圧履歴だったが、高い方が140以上になっている値が目立っていた。余計なことだがちょっと心配になってしまう。米国でのCES会期中の食生活には気をつけようと思ったりもしたわけだ。
個人的には日本でオムロンの上腕式血圧計を使っていて、アプリで履歴が遡れるのは便利に感じているが、現行製品のアプリは分析が甘く、やる気が感じられない。しかしここで見せられたアプリは心拍などとあわせてかなりの高機能版のようだった。ぜひ、日本の現行アプリも、こんな感じでアップデートしていってほしい。毎日きちんと計測することが大事だが、旅行時などはそれができない。だが、この製品なら何の問題もなさそうだ。
爪をアプリが認識してネイルアートを印刷
一方、FUNAIは、日本ではKOIZUMIブランドですでに展開中のネイルプリンターPriNailを出展していた。タブレットやスマホのアプリを使って爪の領域を自動判別させ、そこにお好みのグラフィックスをプリントできるというものだ。
グラフィックスならなんでもいいとのことで、一定のパターンのみならず、人の顔などの写真でもかまわないそうだ。水性顔料を使ったインクジェットプリンターで、プリントに要する時間は10秒程度。自動判別なので、爪の外側をマスキングするといったことも必要ない。ただ、爪の部分のコントラストが高い方が正確にプリントできるということで、ベースに白のネイルを塗っておくなどの前処理をしておいたほうが美しい印刷ができるという。インクカートリッジは4色一体型となっている。
KOIZUMIでは、この製品を日本でコンシューマー向けに5~6万円程度で販売しているが、北米では299ドルくらいの価格でB2B展開も視野にいれた戦略を考えているらしい。ネイルサロンなどで使われることを想定しているということだ。
このほか、WHILLがMaaS(Mobility-as-a-Service)製品として自動ブレーキ搭載の電動車椅子を出展していた。今後は2020年をめどに公道での実用化を行う予定で、現時点では空港や各種施設内での運用を想定したB2B製品として、月額レンタルなどでの提供を考えているようだ。タイヤにも工夫があり、横滑り的な移動もできるのが特長だそうだ。
電動車椅子はかなりの速度が出るのだが、実際に使っている人の話をきくと、人や障害物が邪魔になって、とてもそんな高速移動はできないらしい。だが、自動ブレーキや自動運転の機能が充実すれば、こうした悩みも解消されていくにちがいない。それ以前の問題として、公共スペースを車椅子で移動している方々を無視するような振る舞いは人間として慎みたいと思う。
そんなわけでCESはいよいよ火曜日、1月8日開幕である。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)