予定通り、2018年12月1日にBS4K/8Kの本放送が始まった。個人的には1953年のTV本放送開始時点では生まれてなかったし、1960年のカラー放送開始、1989年のBS本放送開始、2000年のBSデジタル放送開始、2003年地デジ放送開始、どのタイミングもなんとなく消極的で、機材の購入はずっとあとで、リアルタイムではそのスタートを見ていない。だから、この2018年のBS4Kスタートに視聴者として立ち会えたのはちょっとうれしい。
初の4K本放送をパソコンで見る
今回の視聴環境はPCだ。前日に評価用に届いた富士通クライアントコンピューティングの、4Kチューナー内蔵27型ディスプレイ一体型パソコンESPRIMO「FH-X/C3」を使っての視聴だ。箱から出してセッティング、マンションの既存共聴アンテナからの信号を入力し、試験電波が受信できることを確認したのが12月1日の9時30分。本放送は10時からなのでギリギリだ。そして、10時になって本放送が始まった。
4K/8K放送はすべて衛星放送で、地上波での放送予定はないそうだ。ちなみにその解像度は、4Kが3,840×2,160で、8Kが7,680×4,320だ。計算すればわかるが16:9のアスペクト比となっている。ちなみに地デジは1,440×1,080だ。こちらも計算すればわかるが、アスペクト比は4:3だ。地デジの映像は引き伸ばされ、16:9にしてスクリーンに映し出されているわけだ。つまり、地デジはなんちゃって2Kということになる。
実は、4K/8Kの放送に向けて、BSデジタル放送の解像度は一部の局をのぞき、従来の1,920×1,080から、地デジど同じ1,440×1,080に削減されている。地デジと同じ引き伸ばし方式が使われるようになり、こちらもなんちゃって2Kになってしまった。
その犠牲のもとに成立している4K/8K放送だが、たとえば4K放送をパソコンの27型スクリーンで見てもその解像感が伝わってくる。地デジもこのくらい美しければいいのにと思う。
実際に、チャンネルを地デジに切り替えると、ガクッと解像感が下がるのを実感できる。ただ、人間の目というのは賢い。うまく順応できるようになっていて、しばらく見ていると解像度が気にならなくなってしまう。少なくとも、スクリーンサイズに対して、適切な距離を確保して見る限り、劇的に視聴環境が違うという印象は受けない。
4Kのありがたみと8Kの使いみち
解像度は映像の美しさを左右する重要な要素のひとつだが、一般的な居室に設置できるスクリーンサイズを考えると、8Kはもしかしたらオーバースペックかもしれない。といっても、実際に50型程度のスクリーンで8Kの本放送をチェックする環境を持っていないのでなんともいえないのだが、スマホの6型前後のスクリーンで4K映像を見ても、ありがたみをあまり感じないと想像している(が、それは4K対応50型TVを持てないもののひがみなのかもしれない)。4Kと8Kは別物で、8Kの世界はTV放送という既存概念に縛られたコンテンツではなく、もっと別の何かのために使うべきものなのかもしれない。
地デジとBS4Kでは解像度のみならず、圧縮コーデックがちがう。地デジが10数Mbps程度のMPEG2なのに対して、4Kは地デジとほぼ同等のビットレートで、コーデックにH.265/HEVCを使いより高い画質を確保している。さすがに8Kはビットレートとして100Mbps程度が必要なので、日常的な視聴環境として導入するにはけっこうハードルが高い。
最新の技術を使えば、さらには次世代の技術を使えば、地デジでも4K放送は可能ということを意味する。動きの速いスポーツ中継などを見るたびに、ノイズに遭遇してがっかりすることが多い地デジが、もっと美しく見れることが保証されるのなら、もう別の局としてチャンネルを増やすのではなく、地デジと同一内容の放送をして、10年くらいかけて、TV放送はBSに完全移行させ、インターネット配信とのサイマルで補完したっていいんじゃないかななどといけないことを思ったりもするわけだ。もちろん、そうは問屋が卸さないのが放送行政というものだということはわかっているのだが……。
以前、IIJ(インターネットイニシアティブ)の鈴木幸一代表取締役会長が「電波メディアに未来はない」といった発言をしていたのを思い出す。丸一日、4K放送を堪能し、未来のTVに想いをめぐらせた。とりあえず、4K視聴環境を整えるのはもうちょっと先でもいいか……。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)