ドコモ、KDDI、ソフトバンク3社の四半期決算が公開された。管官房長官の「4割」発言以来、話題になっている料金問題だが、決算内容に加えて、3社ともに官房長官の高すぎ批判にどう応えるのかが注目されていた。
口火を切ったドコモ、続くau、ソフトバンク
皮切りはドコモだった。10月31日の決算会見で、現在の料金から2~4割程度値下げる低廉な料金プランを用意(2019年度第一四半期に発表・提供開始予定)、最大4,000億円規模の顧客還元をかなえる大胆な料金プランの見直しを発表したのだ。その具体的な内容については、この場では明らかにされなかった。
それでもこの表明を受け、翌日の東京株式市場では、KDDIの株は15%、ソフトバンクグループも7%を超す下落となったというから、かなりのインパクトだ。
翌日11月1日、KDDIが決算会見を行い、楽天との事業連携合意について発表、さらに値下げについても言及した。同社はピタットプラン、フラットプランをいちはやく導入し分離プランを実現している。そのプランによって平均請求額は3割低下し、それを顧客還元額に換算すると3,000億円を超える見通しだという。
「スマホの価格が上がる」という指摘も
KDDIの高橋誠氏(代表取締役社長)は、「昨日のドコモの発表には驚いた。KDDIとしては真摯に政府から言われていることをやってきていて、他社に対して先鞭を付けているつもり。平均請求額が3,000億円さがっているという事実は、ドコモがいう4,000億円に相当する。ドコモより一歩先に宿題をすませていると考えてほしい」と発言する一方で、これらの施策によって端末価格があがっていくことを指摘した。
さらに週が明けて11月5日、ソフトバンクグループの決算会見では、孫正義氏が値下げについての質問に答え「ウルトラギガモンスター+などですでに安いはず」と回答。同氏は、顧客の8割は若者中心にたくさんのパケットを消費する層で、彼らは格安というよりも大容量を使いたがっていることを指摘、そのトラフィックの43%が動画視聴やSNSによるものだということで、それらがゼロ円となるサービスを提供しているということはギガ単価がゼロ円であるということであり、すでに安いはずと主張する。
ただ、ソフトバンクはKDDIとは違い、さらなる値下げについても考える余地があるムードも感じられた。なにしろ通信事業の人員を4割削減する方針を示したのに加え、端末とサービスの料金分離についても、端末の売上げ額は減っていくだろうが、もともと端末ビジネスでは利益が出ていなかったから営業利益には影響しないことをアピールしていた。
通信でない領域に進む通信会社
このように、メガキャリア3社が、それぞれ異なる見解を明らかにしたわけだが、どうにも状況は複雑だ。この値下げがどのようなかたちであれ、各社のビジネスに影響を与えないはずはない。各社ともに値下げ分の穴埋めのために、ライフスタイル領域や金融領域などでカバーするといっている。
つまり、通信会社であるにもかかわらず、通信ではない領域でビジネスを進めていく方向性が顕著になるわけだ。5Gネットワークがこれから立ち上がろうとする時期、そして、災害対策が問われる今、将来の通信インフラをきちんと整備し、拡張していくことへの副作用があったりはしないのだろうか。
端末販売を通信サービスから分離することで、通信費の請求額は安くなるかもしれないが、その代わりに、コンビニで決済した弁当代や、スマホで楽しんだゲームや電子コミックなどのコンテンツ代が増えてしまい、見かけの請求額が上がってしまうようにはならないのか。
とにもかくにも、現状での支払い額の内訳を理解しよう。高い安いを論議するのはそれからでも遅くはない。とにかく賢い消費者でありたい。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)