日本マイクロソフトが日本の中堅中小企業(従業員1,000名未満の法人)のPC環境についての調査結果を公表した。いわゆるSMB(Small and Medium Business)と呼ばれるカテゴリに属する企業だ。
PCは壊れるまで使うのが美徳?
PCの平均買い替え年数は5.4年で、購入から4年以上たったPCが全社内PCの41%を占めるなど興味深い結果が出ている。
4年以上経過したPCは3.4倍修理する確率が高く、2.4倍にあたる129時間の生産性を喪失する運命にあるという。そして、そのためにかかるコストは1台あたり349,983円で、この金額は、最新のPCを2台以上購入できる額に相当するという。
耐久消費財は壊れて使えなくなるまでは使い続けるということが一種の美徳として考えられていた時代があった。PCはコモディティになったといわれているから余計にそう考えられがちだ。4年前のPCも最新のPCもできることは何も変わらないなら、古いPCをそのまま使えばそれでいいし、そのことで、「変わること」を使う側の従業員に強いる必要もなければ、使わせる側も新たな環境を評価する手間をかけずにすむ。新しいPCを経験しなければ、古いPCのパフォーマンスが低いことにも気がつかない。
OSの変化は深いところで
Windowsに限ったことではなく、このところ、iOSやAndroidなどのモバイルOSを見ていても、さらにはOfficeのような企業には必須のアプリを見ていても、大きく変わったことをアピールするというよりも、変わったことには気がつかないくらいに外観の変化を抑え、奥の深いところでさまざまな面を刷新するというパターンが目立つ。
いわゆるモダンOSは、ここ数年、少なくとも見かけや使い勝手は大きく変わっていない。そこにはつまり、変えたくても変えられないジレンマがあるわけだ。Windowsでいうなら、半年に一度、機能追加のための大型アップデートがあり、それを適用していけばWindows 10という名前のままで、ずっと最新のOSとして使い続けられる。
直近では、Windows 10 October 2018 Updateがリリースされたものの、不具合でいったん取り下げられ、現時点で未再開という事件が進行中だが、OSのバージョンは最新になっても「Windows 10」という名前のままで、外観も大きくは変わっていないので、家庭内で使っているようなユーザーは、変わったことさえ気がつかないかもしれない。
利用者に負担のない運用が「腕の見せ所」
WindowsもOfficeも2020年にサポート切れという節目を迎えるが、同じものをずっと使い続けていて、それを特定の時点で一気に変えるというモデルは今回が最後で、知らないうちに新しくなっていくことを受け入れることが求められてきている。そうすれば、サポート切れを目前に、コストと手間をかけて、入れ替えの作業に苦しまずにすむはずだからだ。
そうはいっても、いろいろと不安が残るという声も聞こえてきそうだ。確かに現状で何の問題もなく使えているものが、自分たちの責任以外のところの変更で、不具合につながるようなことがあれば、それはとても理不尽だと感じるのは当然だ。
それでも今後のことを考えれば、環境が変わっても不具合が起こらないようにするためのノウハウを蓄積すべきであり、そのオーバーヘッドは処理性能の高いPCに吸収させるというやり方を検討した方がよさそうだ。強固なセキュリティを確保するには、使う側も標準から逸脱しないでいることが重要だ。
「変えたいけれども変えられないから変わらない」というのはOSを提供する側の譲歩だ。そこをうまく利用し、エンドユーザーに大きな負担を感じさせることなく運用する方法を確立すること。それが、これからの企業における管理者の腕の見せ所なのではないか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)