パナソニックエコソリューションズ社が「HOME IoT」の中核機器「AiSEG2」を機能強化するという。2016年秋の発売以来、2度目の機能拡張となる。
家にあるスマート家電をまとめてコントロール
今回「AiSEG2」は、Googleアシスタントなどのスマートスピーカー連携やLINEとの連携、また、宅配ボックス連携にEV充電設備と太陽光発電システムの連携などを実現する。その多くは業界初となるそうだ。その結果、20社33機器との互換性を確保、その機器数を業界トップクラスに拡大して、共働き、高齢化、猛暑、省CO2に起因する悩みごとを改善していくという。
エコソリューションズ社エナジーシステム事業部の谷口尚史氏(エナジーシステム事業部システム機器ビジネスユニット長)は、その市場背景を説明する中で、省CO2を促進する国策や、ゼロエネルギーハウスの実施、EV/HEMSの導入などの追い風を指摘する。たとえば、EVは2020年には10万台に達するほか、共働き世帯は全体の62%になり、人口構成は高齢化して全体の27.7%を占めるようになる。それに今年は過去最高の猛暑を記録している。
そんな中で、限られた資源であるエネルギーをいかに効率的に使うかは、未来の暮らしを豊かにするために必須の要件だという。現在、同社は新築戸建てにおける、この分野の市場占有率1位で、そのビジネスを既築戸建てや集合住宅へも展開していく計画だ。
集めたデータを「どう活用するか」が鍵
ちなみに谷口氏は入社以来ずっとパソコンに関わってきた。パナソニックのパソコンといえばレッツノート。そのテクニカルセンター長からエコソリューションズ社に異動、ビジネスユニット長に7月に着任した。
「最初はハード単品を売ることから始めたこのビジネスですが、それでは広がらないことがわかっています。ですからモノからコトへの転換が必要です。いろんな商品があるのですが、ゲートウェイがあって、各種のIoT機器とつながることで暮らしを豊かにしていくことにコンセプトを絞り込みました。
企業が今いちばん欲しいのはデータです。データがないと先のビジネスが進みません。でも、家電などの単体ではデータをとるすべがなく、リカーリングビジネスをすすめることができませんでした。
ところがこの世界は違います。データはたくさんとれることを前提に、それをどう活用するかが問われます。だからこそ、どんどんAiSEGの普及を進め、データの収集と、その分析結果を提供するようなサービスに展開することでビジネスを推進したいと考えています」(谷口氏)。
つながる世界はまだクローズド
とはいうものの、つながる世界はまだまだクローズドだ。業界トップクラスの互換性といっても20社33機器の機器とつながるだけだ。素人目にはあまりにも少なく感じる。
そんな中で、エコーネットライトはスマートハウスを実現する通信プロトコルとして、共通規格になっている。連携機器メーカーは、この規格に準拠した製品を作れば、多くの場合はつながり、互換性を確保できる。ところが通信ができるだけでは役に立たない。微妙に規格解釈の仕方に誤差があり、たとえばエアコンなら温度設定などがうまくいかないケースもあり、互換性がとれないこともあるのだという。だから、綿密に接続実証が求められる。やはり安全が最優先されるからなのだろう。確実に互換性が確保できることを証明できなければつながるとはいわない。
そこで2年前の2016年に開始されたのがエコーネットのAIF認証だ。相互接続性の向上を図るため、アプリケーション通信インターフェース仕様に沿って行う認証/試験によって互換性が確保されるようになった。重点8機器とされる「スマートメーター」、「太陽光発電」、「蓄電池」、「燃料電池」、「エアコン」、「照明機器」、「給湯器」、「電気自動車用充放電器」がそれだ。これによって、インターフェースのオープン化が進み始めたというのが、現在のスマートホームのステージということだ。
「新しくこの世界に入ってきてまだ時間はたっていませんが、まだまだ業界自体が育っていないという印象があります。やはりつながる機器に制限があるというのをどう解決していくかが重要なテーマですね。どんなものがきても同じようなコントロールができることが理想です。だからこそ、他社の機器の連携をすすめたいと考えています。
そのためにもデファクト化、オープン化をすすめないといけないでしょう。これを競合他社とすすめていきます。企業の垣根をこえて広げていきたいです。
現状でのスマートホームには、いわゆる松竹梅があります。安あがりで、機能を限定した梅連携は赤外線リモコンなどでできるのでゼロにはならないでしょうけれど、それを連携といってはいけないんじゃないでしょうか。HEMSを含めて家電をコントロールしなければなりません。つまり、双方向の通信と、エネルギーコントロールは必須です。電力の流れを見ながら、翌日の天気予報を見て、夜間の蓄電などの量を制御し、加えて見守りサービスなどでトータルのホームソリューションを提供していくことをめざします。
今後は、インターフェースとしてボタンやコンセントといったものではなく、空間自体がインターフェースとなるような世界をめざしたいですね」(谷口氏)。
みんなが使えば値段も変わる
スマートホームに要するコストは今後の5年間で半額になってもおかしくないと谷口氏はいう。みんなが導入すれば値段も変わるというわけだ。
オールパナソニックとして、いろいろな製品がある土壌の中でゲートウェイをもっていて、2012年からずっとやっているエコソリューションズ社のスマートホームの歴史の中で、新しく谷口氏が取り組む仕事が発展する可能性はどうか。
谷口氏は、着実にやっていきたいとする。つながる機器を多くしないと顧客は満足しないし、ひとにぎりの製品がつながるではだめだということもわかっているともいう。とにかく次の5年間でこのスマートホームの世界を浸透させたいと、谷口氏は期待を語った。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)