ドイツ・ベルリンで31日に開幕する「IFA2018」直前のタイミングで、インテルがモバイル向け第8世代Core iプロセッサのラインアップを刷新することを発表した。既報の通り、8th Gen Intel Core processor familyの新シリーズとして、Whiskey Lakeのコードネームで呼ばれてきた低電圧版のUシリーズと、Amber Lakeのコードネームで呼ばれてきた超低電圧版のYシリーズが強化されている。

  • 15.6型で1kgを切った世界最軽量のSwift 5が登場

レノボ2画面ノートにも新プロセッサ

その発表にあわせて、PCベンダー各社も新プロセッサ搭載ノートPCを発表した。モビリティの確保のためには、軽いこと、薄いことといったフォームファクタ、長時間使えるバッテリライフ、そして、高速大容量の通信環境が求められてきたが、その一方でパフォーマンスについてはある程度トレードオフにされてきた。だが、今回の新プロセッサは、パフォーマンスの確保に注力されている。特に、Uシリーズプロセッサが強化されたことで、USB 3.1 Gen2や、ギガビットクラスのWiFi、そして、オーディオ機能が包含された。それによって低コストで高パフォーマンスのモバイルPCが手に入るようになるわけだ。

PCのパフォーマンスはプロセッサの処理能力だけで判断しがちだが、日常的な利用には、こうした周辺拡張のパフォーマンスが使い勝手に大きな影響を与える。ただ、同時に発表されたYシリーズは若干のクロック周波数の向上以外に、これといったアップデートがない。このYプロセッサの搭載製品は、今回のIFAでも探すのが難しいくらいだが、かろうじて、デルが「XPS 13 2-in-1」に搭載したほか、話題のレノボ2画面ノート「Lenovo Yoga Book C930」への搭載を確認することができた。

圧巻のAcer、世界最軽量の15.6型が登場

この原稿を書いている時点で、まだ、IFAそのものは開幕していないが、各社が開幕前に開催するプレスイベントで、新プロセッサ搭載の製品が少しずつ発表されている。

中でも圧巻はAcerだ。今年の同社は1kg以下、1cm以下にこだわる姿勢を見せている。たとえば、今回発表された世界最軽量の15.6型タッチ対応クラムシェルPC「Swift 5」は990gだし、「Swift 7」も同様に1kgを切り、1cmに満たない厚みを実現しているという。現行機の「Swift 7」が1.125kgだったことを考えると大きな進化を遂げているが、『Swift 5ショック』の方が個人的には大きい。とにかく今回のIFAではAcerの勢いを強く感じた次第だ。

  • 1cm、1KgにこだわるAcer

  • 新旧のSwift 7を比較するAcer CEOのJason Chen氏

日本ではマイクロソフトのSurface Goも発売となったようで、ノートPCのフォームファクタは今、大画面と小画面に二極化しているように見える。据置で使って携行するという点では大画面がいいが、いろいろなところでカバンから出し入れして頻繁に使うという点ではフットプリントが小さい方が有利だ。

大きくても軽い、小さくても軽い

大きくても軽い、小さくても軽い。軽くて薄くてもパフォーマンスは確保できる。モバイルは今、用途に応じたフォームファクタを選べる時代に、ようやく突入しようとしているようだ。

今はまだ、1台のPCをあらゆる時と場合に使うのが主流だが、今後は、一人が複数台のPCを使い分けるマルチPCの時代がやってくるだろう。そのためにはコストも一段とシビアな問題になってくるわけだが、スマホが先行して実現したように、一家に一台ではなく、家族の一人一人が自分自身のPCを持ち、暮らしの中で役立てることが当たり前の社会がやってくる。特に日本はそうならなければなるまい。これからは働き方も変われば教育も変わる。今年のIFAではPCベンダーの元気を強く感じた。この勢いを継続し、そんな社会に貢献してほしいものだ。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)