MicrosoftはWindows 10を最後のWindowsとし、メジャーバージョンアップはもうないとアナウンスしている。そして、その一方で、Windowsは変わり続けている。その証が半年に一度の機能アップデートだ。

前回の機能アップデートは昨秋でバージョン1709として、「Fall Creators Update」が提供された。あれから半年が経過し、予定通り、新しい機能アップデートとしてバージョン1804の提供が開始された。このバージョンは「Windows 10 April 2018 Update」と呼ばれる。お手元のPCにも、すぐにWindows Updateで配信されるだろうし、すでに更新された方もいるはずだ。

  • ブラウザ「Edge」では、Windows 10 April 2018 Updateのアップデート概要が表示される

「変わるWindowsを究める」という視点で過去を振り返ると、Windows 10は、3年ごとに出る新シリーズと、半年ごとの機能更新プログラムのタイムラインで構成される。

●Thresholdシリーズ

  • TH1 Version 1507 (RTM) (OS build 10240) Windows 10 RTM(最初のWindows 10)
  • TH2 Version 1511 (OS build 10586) November Update

●Redstoneシリーズ

  • RS1 Version 1607 (OS build 14393) Anniversary Update
  • RS2 Version 1703 (OS build 15063) Creators Update
  • RS3 Version 1709 (OS build 16299) Fall Creators Update
  • RS4 Version 1803 (OS build 17134.1) April 2018 Update

そして、RS5が半年先のこの秋、2018年9月リリースが予定されている。RedStoneシリーズは次の更新で完結することになるはずだ。

個人の時間を大事にする大型アップデート

Microsoftは今回のリリースが「プライベートや仕事において、皆様が大切にしていることのために使える貴重な「時間」をさらに作り出します」という。

Microsoftのアナウンスでは、追加された新機能として、

  • タイムライン
  • 集中モード
  • モバイル通信プラン対応
  • 新元号対応準備
  • Microsoft IME の予測入力

などが挙げられている。ただ、これらがすべてではない。たとえば、これまでコントロールパネルで設定しなければならなかった要素の多くが設定アプリに引っ越してきている。

  • April 2018 Updateの目玉のひとつ、タイムライン機能。過去の使用履歴を一覧でき、スクロールで確認できる

Windows 10には、こうした大規模アップデートの配信とは別に、Windows 10 Insider Previewという仕組みがあり、次の大規模アップデートの内容を、実装次第すぐ、頻繁なアップデートで獲得できる。Fast、Slow、Skip Aheadといった頻度を指定するリングが用意され、Microsoftアカウントさえあれば安定した運用と引き換えにはなるが、自由にこのプログラムに参加できる。

ちなみに、2017年秋のFall Creators Updateに対して、今回のApril 2018 Updateまで、Fastリングには20回以上の更新があった。適用したあと、ブルースクリーン(実際にはグリーンスクリーン)が多発するなどで前のビルドに戻すなどのことはあったが、手元の環境のひとつにはすべての更新を適用した。その結果、かなりの期間IMEの制御に関する不具合につきあうことになった。これはこれで自己責任なので仕方がない。

Insider Previewは、1カ月に3回程度の頻度での更新によって、少しずつ機能が追加されていくので、何がどう変わったのか把握しやすい。慣れる時間も少なくてすむ。だが、これを一般のユーザーに勧めるわけにはいかない。だから、半年の機能アップデートを適用するユーザーにとっては、半年分の変更を一度に受け取ることになる。かつてはほぼ3年に一度だったWindowsのメジャーアップデートに比べれば半年という期間は短いかもしれないが、それでも変更は多岐にわたる。

新機能は多彩、オフィシャルで丁寧な告知を

ユーザーにとってWindowsの更新は「かつてできなかったことができるようになる」というメリットがあると同時に「かつてできたことに別の方法が強いられる」という手段の学習が強いられるデメリットを受け入れるということでもある。「かつてできたことができなくなる」よりはいいが、それでもある程度の混乱は避けられない。

たとえば、今回のアップデートではNear Share、日本語機能名では「近距離共有」と呼ばれる機能が追加されている。Wi-FiやBluetoothで近くにいる他のユーザーとコンテンツを送受信できるものだが、デフォルトでは機能がオフになっていて、教えてもらわなければおそらく気がつかない機能だ。また、設定アプリに移ったフォントの管理についても大きな手が入っている。Bluetooth関連の仕様にも手が入った。ゲームモード、MR関連の変更もある。

問題は、これらの情報があちこちに分散していて、系統立てて知る方法が用意されていないことだ。細かいところを含めて少しずつよくなっているのだから、それでいいだろうというのではすまされないのではないか。

Microsoftの名誉のためにいっておけば、これは何もWindowsに限ったことではなく、iOSやAndroidでもいえることだ。OSのバージョンアップは、もはや無料が当たり前になり、機能の追加はもちろん、セキュリティ上の理由からも更新は必須だ。実際、以前のバージョンのサポートはリリースから18か月後に終了する。1709であればサポート終了は2019年4月だ。

変わり続けるWindowsに抗ってもいいことはないだろう。だから更新は不可欠と考えるべきだ。だからこそ、Microsoftにはオフィシャルで確かな更新情報の提供を求めたい。更新で購入時とは大きく異なるデバイスに変貌するのがソフトウェアだ。今まで普通に使えていたアプリケーションが正常に使えなくなるというのはアプリが悪いのか更新が悪いのかは別にして、ユーザー自身が気がつくことができる。だが、OSそのものの更新のあと、自分で細かく調べないと何が変わったのかがよくわからないというのはないんじゃないか。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)