先週、ソフトバンクと三菱地所が東京・丸の内の仲通りにおいて、自動運転バスの試乗会を実施した。ソフトバンクグループのSBドライブ社が所有する運転席がない自動運転シャトルバス「NAVYA ARMA」を使ったプロジェクトだ。
運転手不足や交通弱者の移動を支援する手段として期待されている自動運転バス。東京23区内の公道を自動運転車両が走行するのは今回が初めてということで、大きな一歩になりそうだ。
人間の走行ルートを自動トレース
バスの外観はミニバスといったイメージだ。立ち席4名分を含めて定員は15名となっている。あらかじめ人間のドライバーがゲーム機のコントローラのようなものを使って実際のルートを走行すると、バスがルートや地形を記憶し、あとは自動でそれをトレースするという段取りになる。
今回のコースは仲通りの一部を交通閉鎖し、ルートは直線、しかもフェンスで囲われているという過保護状態となっていた。「NAVYA ARMA」は4WS、つまり、4つの車輪がすべて可動の操舵をするが、直線コースなので今回は出番がない。急に人が飛び出したようなときにも、それをよけるのではなく停止する。唯一、テスト車両を人間がコントロールしてコースに搬入するときに、4つの車輪が舵を切っているのを確認することができた。
「NAVYA ARMA」は最高時速45キロの電気自動車で、最長13時間の走行が可能だ。今回のテストコースでは約100メートルを最高時速5キロで走行した。実際に試乗したが、停止時は、ちょっとした急ブレーキ感があり、運転については人間の方がうまいとも感じたが、これはルートを学習させたときの人間のドライバーのせいだろうか。
以前、別の会社のテスト自動車を、その会社の研究所敷地内で試乗したことがあるが、そのときは、要所にある止まれの標識を無視するのに驚いたことがある。当時は、それがプログラミングされていないからという説明を受けたが、こうして公道を走るようになるとそういうわけにもいかなくなるのだろう。
レーザースキャナーで障害物を検知
「NAVYA ARMA」は数センチの誤差で位置を確認できるGPSで自車位置を測位し、LiDARと呼ばれるレーザースキャナーで障害物を検知して、設定したルートを自律走行することができるという。ただし、今回は、丸の内というビルが密集するエリア内がコースということもあり、GPSの精度が担保できないため、レーザースキャナーだけで自律走行をさせた。技術にしても運用にしても、まだまだ問題は山積みだが、それは法律や社会の準備が整うにつれて解消されそうだ。
自動運転についてはいろいろな話がいろいろなところからきこえてくる。高速道路の運転中に、入り口から流入してくるクルマがいれば、普通は内側の車線によけるなり、それができない場合は少しスピードを落とすというのが人間の運転だが、自動運転車はそういうことをいっさいしないともいう。運転席にいる人間が、なんて意地悪なんだと感じたりもするらしい。事故が起こらないように走行する段階から、周りへの配慮や気配りといったところまで進化するにはあとどのくらいの時間が必要なのだろうか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)