11月23日、インテルが新プロセッサ「Cofee Lake-S」ことデスクトップPC向けの第8世代Coreプロセッサの発売イベントを東京・秋葉原で開催した。イベントで登壇した江田麻季子氏(インテル代表取締役社長)は、国内PCの需要は企業向けは上向き、個人用もようやく底をついてこれから伸びると期待する。

東京・秋葉原で開催された、デスクトップ向け第8世代Intel Coreプロセッサ(開発コード名:Coffee Lake-S)発売記念イベント

PCゲームのオンライン観戦が市民権を得た

今の個人向けPCシーンはゲームが支えていると言われている。かつての高性能プロセッサは、ビデオエンコードの速度でその処理性能をアピールすることが多かったが、結局のところ、モバイルでのストリーミング視聴や各サービスへの配信対応などで、自分が自分のために動画ファイルをエンコードするような用途に、個人向けのPCが使われ続けるようなことはなかった。

だが、昨今のゲームは、高精細なグラフィックスをスムーズに表示しながら、かつ、その映像をストリーミング配信して人に見せるというスタイルを生み出した。これは、単にバッチ処理で動画ファイルをエンコードするよりもずっと負荷が高い。

こうしたスタイルが生まれたのは、ゲームはプレイするものであると同時に、うまいプレイヤーのゲームを観戦するというエンタテイメントが認知され、市民権を得たからだ。

古い感覚でゲームを認識していると、コンピュータとの対戦というイメージがつきまとう。部屋に閉じこもり、黙々とコンソールを操作する暗いイメージだ。

今、e-Sportsと呼ばれているゲームの世界は、そんなイメージを払拭する。コンピュータはあくまでも、ゲームのお膳立てをするプラットフォームであり、競うのは人間同士だ。その背景にどんなハイテクノロジーがあろうとも、そこで戦っているのは人間なのだ。

そのゲームプレイを観戦するというのは、テレビのスポーツ中継を見て一喜一憂するのと何の違いもない。当然、ひいきのチームや選手も出てくる。そして、そのプレイにあこがれて、自分でもやってみたいと思うようになったりもする。e-Sportsのブームにおけるエコシステムはこうしてできあがる。

もはや「オタクのマニアックな遊び」ではない

今回のインテルの発売記念イベントではプロゲームチーム「DeToNator」所属のYamatoN氏とStylishNoob選手らとともに、江田社長が参戦し、第8世代Coreプロセッサ搭載PCを使って「PLAYERUNKNOWN’S BATTLEGROUNDS」をプレイした。江田氏はYamatoN氏とペアで参戦、StylishNoob氏と協力しながら共にゲームの世界で10分間生き残ることを目指し、ほとんどデートかと思われるようなシーンを楽しみながらも成功を勝ち取った。

インテル代表取締役社長の江田麻季子氏

米Intelは、オリンピックのワールドワイドパートナーだが、2018年に平昌で開催される冬季オリンピックに併せ、Intel Extreme Mastersの平昌での開催を予定しているほか、選手村にゲームキオスクを設けてゲームの世界のスポーツ化をアピールすることをもくろんでいる。

いわゆるオタク世界のマニアックな遊びではなく、メジャーなスポーツとしてのコンピューターゲームのプラットフォームがあるということを、世の中の多くの人はまだ知らない。あるいは先入観だけでとらえている。

人と人が、あるいはチームとチームが、熾烈な戦いを繰り広げ、日頃の鍛錬によって身につけた技術を競うのだ。キカイを使うという点ではクルマのレースと同じだし、道具を使うという点ではアルペンスキーやスピードスケートと同じだ。

プロセッサの高速化により、e-Sportsの世界はさらなる高みに向かっている。近い将来、オリンピックの正式種目としてe-Sportsの追加が検討されているようだが、その採用は間違いなさそうだ。もっともそのためには暴力や殺戮とは無縁のゲームコンテンツの誕生が求められるだろう。そしてそれは既存のスポーツをコンピューター上に持って来たものであってはつまらない。コンピュータならではの何かがそこに求められるはずだが、それがどんなものなのかはまだわからない。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)